半休の朝畳の上に寝転びて独り本読む八月六日
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折り返し過ぎた人生ルビをふり隠し通せば嘘も方便
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断われぬ 見合い話を 告げたあと  僕の背中で 泣きじゃくる君
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角灯ランタンの 燐光仄か 通草蔓あけびづる 雲の揺れ揺れ 月朧つきおぼろなり
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窓見ればカーテン越しの月明かり常夜灯にて眠気を誘う
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耳につく軽い冗談軽い嘘それでも好きだこれでいいだろ
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空き地にてWiiではあり得ぬ友の情「やめろよ磯野」と中島がいう
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あのひとの命日だけは禁煙を破ってもいいことにしている
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‪生きていくモチベーションを持つためにあなたを好きでいていいですか‬
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‪好きになりそうだ彼氏を作らなきゃまだ友達でいられるうちに‬
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君の部屋 聞こえる音は布ずれと寝息、クーラー、たまにサイレン
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土曜日の午後に見つかる幸福論 夢のほとりに君がいたこと
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温い風頬を撫で捨て去っていく八月八日の熱を嗤って
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交差する電車の向こうに君がいる 等身大の君を直視できるよ
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ふたりでは行けない世界だとしてもふたりじゃなくちゃいけない世界
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この空は誰のものでもないのだよもちろん花も風も心も
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宙を見詰めしきりに指を折る人は短歌を作る人かもしれない
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木陰から「じゃあな」と言って走り出す男児らの影夏のいろど
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髪留めを 直すしぐさに キュンとして 思わず君を 抱きしめたかった
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「ねえ今日の嘘の深さはどれくらい?」「きみは充分溺れられるよ」
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朝の五時きみのベッドは海となり寝息ふたりぶん浮かべてゆれる
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かく続く氾濫水害いつまでか ノアの箱舟今さらながら
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パスワード とっさに浮かぶ四桁は君らの生まれ足したものです
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朝が嫌、夜も嫌だし、昼も嫌。なのでおやすみ、冬まで夏眠かみん
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お風呂で寝ちゃってたんだと笑うけど人工呼吸はキスじゃないのよ
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駄々こねりゃ仕方ないなとにやけてる君を好きになってよかった
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海面に浮かび上がった大クラゲ ひかり振りまく月のお出まし
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指先でつまめる程の巻貝を集めて聞くは海原の声
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死にたいと思ったことのないひとが決める僕らのあかるい未来
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「ごめんね」と下げた頭の旋毛つむじから湧いてしまった泣きたい気持ち
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