真玉手の触れ合う先が帯びる熱に浮かされながら映画を観たい
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思い出はいつも朧にできている指名手配の写真みたいに
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俺の詠む短歌が犬だのねこの様に可愛ければよかったのに
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半月がけぶれて落ちる朝凪はむやみに泣けて帰れなくなる
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「愛してる」その一言が言えなくてもどかしいまま歯がゆいままで
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安宿あすかとは安らぐところ誰も彼も求めて止まぬ歌あるところ
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横文字の追ひつめて来る片隅に歌の明かりをいつも眺めつ
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屑ばかり積みあげてゐる小部屋にて花くづ歌くづ星くづ愛づる
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さみしさを飼い慣らす術分からずに窓辺で数える月一つきり
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着色料濃いグミのような君に触れてべろ緑色に祖国のアメリカ
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人である自分 「何か」である自分 行ったり来たりし続ける僕
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しゅう』の字の、横棒の数が多すぎて面白きかな人の生きはて
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燃えしぶるたばこの葉殻の恋煩い気付かぬままの人の子らよ
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眼鏡かけ笑まふ素顔を知りたくて飛ぶ鳥けふも海を渡れり
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歌つなぐEtoEのおかげゆゑ心うつせる秋の夕暮れ
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佐保姫と竜田姫なら人を濃く染めあげてゆく秋の姫かな
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蟋蟀こほろぎのろろろとうがひの音の聞く「あ、うん」と君に 夜はふけれり
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札数も強さも要らぬ配られたカードできみを斬りつけてやる
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悲しみに不意に触れてはなりません海の涙はくらげですから
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僕たちは起き上がれないだるまさん はじめの一歩が踏み出せずいる
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掻き抱いた腕の中身は幻想でただてのひらがパチパチと鳴る
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海原のEtoEを翔ぶ鳥の淋しさを抱く安宿あすかはいずこ
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僕たちはビンボーゆすりさ いつだって 仕方がないさ 多動だもんさ
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三つ編みがまぶたの裏で揺れている 顔も声ももう忘れてしまった
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ゆめのなか都会の夜を彷徨ったきみとわたしの午前二時半
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掠め取り自己の認知も歪ませて居直っているヤツばかりなり
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光など見たくもないな今だけはどこまでもただ沈んでいたい
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こんなことささいなことと思うほど悩むことさえままならぬまま
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乗換の駅にてみすず学苑の広告眺め食うたぬきそば
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海辺から柘榴の夕陽眺めてるわたしとあなたルパンと不二子
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