朝日燃ゆ窓辺にふらり目眩して夜に焦がれしバタートースト
1
家出したみたいな顔で街をくわたしは疾うに空洞である
1
淡雪のハンドルネーム知りたくてマスカレードの夜に尋ねる
0
死なないで、私が死ぬまで生きていて、願わくば君、永遠であれ
0
性欲と滅却欲の谷あいの真っ暗闇に灯る光は
5
雪化粧 白い粉降りかけられた深緑しんりょくの森 針葉樹しんようじゅたち
2
若者の 言葉名前に 苦労する 誰か訳して 神様ヘルプ
0
通販で 運動器具を 買ったけど 部屋からやがて クローゼットへ
0
気づいたら いつも視界に 君がいて 意識しだした クラス合宿
0
はるか地のはてに光りの溜まりあればやがて死海と名つけたまへり
4
頼ること よりかかること 恥じゃない みんな待ってる 君の勇気を
0
ありがとう 君の笑顔に 何回も 助けられたよ 幸せな僕
0
身にあたる闇夜をはらふともしびは塵も焦がるる洗礼者ヨハネ
1
すれ違い 思い通わず 泣いた日々 あの日があって 今は幸せ
0
夢に見し人はかげらう梔子の色がにこりと微笑わら
0
明け方のふとんにねむるふたひらの耳があつめてゐる雨の音
6
海と河の混じるあたりをふたりして見てをり恋の終はりのやうに
2
理科室の記憶さやかにアルコールランプが照らしてゐる夜の底
2
さやうならとほりすがりのこの庭の白い躑躅の蜜を吸ふくち
3
こぽこぽとあなたのゐないまひるまの部屋に充たされゆく茉莉花茶
2
あはれあはれさくら散りゆくさびしさをあなたのとほい思想のやうに
3
さくらばな 少女が老女となるまでの時を思つて繰る一頁
3
わたくしのからだはうつは まみふかく閉ぢこめてゐるさくらを思ふ
1
ぼくたちは溶け合っていたシロップに漬けた苺を分け合うだけで
3
いつまでも眠りのなかにゐるやうな椅子をしばらくひだまりに置く
4
コンビニのビニール傘に受けてゐる雨あたたかく春がきてゐる
4
空耳は空のことばと思ふ日にまなぶたふかく閉ぢてあふむく
1
ばらばらの色えんぴつをもう一度虹の順序でならべはじめる
3
つまづいたのではないのだ。すこしだけ地球に呼びとめられてゐたのだ。
1
流星のやうにするりと抜けてゆく猫のしつぽの描く残像
2