風薫る散歩道ゆく車椅子 祖母の手触れし紫の花
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真夜中に初上陸の北九州呑みに行けない明日立ち合い
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花粉明け待ち続けてた布団干しそろそろいいと今晴れを待つ
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ブリタの浄水器がまるで砂時計みたいに私の暮らしを急かす
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貰われないマンションのチラシ貰えないボクの見た目と俺の気持ち
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忙しく 会えない時間が増えるにつれ 不安に駆られる歳の差の溝
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ことわりと無常の風が凪いでいた朱塗りの城と琉球の海
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コンペ前ゴルフ漫画を読み漁る 上手くなった気になる不思議
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会社辞め海が見たいと出掛けたが観光地ではひたれなかった
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なかよしの雀に餌をやる夫の背のいつしら僅かな丸みをおびる
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居眠りの間に世界が終わっててあわててつくりなおす神様
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娑婆に棲む 百鬼夜行を バッサバサ 刃こぼれの数と やぶれた皮ふ / 自己免疫
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明けてゆく漁港は船のエンジンとカモメとトンビの共鳴で目覚む
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負け戦 わかってるのに伝えたのは 唯の自己満 「ごめん」が聞きたい
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夜風には若葉の匂い溶け出してひたひたひたと夏は近づく
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寝ないうち鳥鳴きだしてしらじらと夜逃げてゆく戻っちゃこない
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コンクリの段腰掛けて角曲がり出てゆく猫のしっぽ見ている
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電柱と石油のタンク消えかけた横断歩道右折目印
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照らされて風に吹かれてさわさわと佇んでいる鳥が鳴いてる
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戸を開けて浸る空気の芳しさなにとなになになにを混ぜたの
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ごみ箱に捨てられていた悲しいをちくちく縫って補修する夜
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鰯なら買うことできる食えもする食わない人がいるのが困る
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位相幾何 かご中のとり そとのわれ ほんとうは わたしとうちゅうが かごのなか。
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星空に子らの幸せ祈る母 気持ちを抱きしめ私は生きる
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平凡な 日常のなか 「君」が来た 全て変わった 閃光のよう
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認知して くれてありがと 俺の子を あなたが父だ 彼女子を頼む
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ナデシコが 蝶に見えたと 娘が言う 求めよ、さらば 大和撫子
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自分の詩 読み返えすたび 思い知る 壊心こころの叫び 君への思い
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湯たんぽも靴下もはかず眠る夜に春も越えつつあると気がつく
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窓ぎわの工事の音で目が覚める 怠惰な自分部屋に隠して
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