秋暑き昨日までは「クーラー」と今日は「散歩」で汗かけぬける
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まばたきの速さで何を考えているのかわかる はるか向こうで
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炭酸水の泡に生まれ変わってはじけて消えたい秋の静けさ
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この世界でのルールでは人格は体一個に一人だという
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ピアノ線を張るのはやがて滑り失せてしまう山をき留めるため
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雨の降る日暮れ追い越し秋が来て 花は散ったか 月は満ちたか
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常温で流し込むストロングゼロストロングゼロストロングゼロ
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ウィンドウを開けばここは一面のみっくみっくに土砂降りの星
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死ぬ予定しかない犬である我ら舌を垂らして都市をうろつく
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「あぁそうか、今年もあと〇ヶ月だね」だけ繰り返し終わる人生
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ふにふにと暮れてゆく秋三毛猫のきんたまみたいな銀杏ふたつ
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静けさの結界いっしゅん解くように咳払いする展示室B
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一人居の祖父の裏庭わっさりと今年も葡萄ずっといきてて
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まるい虹かかればみんなペンを置き窓に集まる子供の目をして
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ふて寝するきみの毛皮いぶされて腹をもふれば除虫菊の香
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百年後私は鷗 両翼にその悲しみを湛えて生きる
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ともだちができますように ともだちがなにかがいつかわかりますように
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シマシマのチェックスカート座布団の上でゆるゆる座り居る客
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海は嫌いプールも嫌い日差しも嫌い 夏が好きなのはサイダーのおかげ
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失った生身の影を探しつつ人格データのさまよう未来
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目薬をしてぼやけた街の灯とスマホの光はどちらが遥か
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秋空の青と物干し竿の青どちらが青いか比べて背伸び
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サークルのトレーナー君に着せた日と同じ寒さの鴨川の秋
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想像していたよりもずっと透明な裸足 花というより焼き物の白
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故郷より星は確かに遠ざかり血潮の音に波見る目蓋
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社会という大海原の真ん中で逃げるためには波風がいる
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飯眠り運動仕事タバコ付き どこにエモさがあるというんだ
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あの空気が好きだっただけ だって俺タバコ吸えないし酒飲めないし
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まだ痛む1.2ミリの致命傷きみはとどめをさしてくれない
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私たち魚に生まれ変わっても海に溺れる魚になりそう
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