軽トラを手離した日を後悔す ボランティアには要るものだから
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「古希だって!信じられない」と言う人の 髪を結んだゴムのピンクよ
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もうすぐさ 君が裏切る旅立つ記念日だ そこは僕らの記念日だった
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集まった同級生は皆肩に 乗っけておりぬ悲しみ痛み
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名も知らぬ島に行きたし空と海区別の付かぬ絵のような
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名も知らぬ隣の人のエアコンが唸り立てたる大寒の夜
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時として狂言自殺を試みる 豆腐の角に頭をぶつけて
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まよなかに世界のほんとに気づいたらラーメン食べよう ぜんぶ無視して
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寒月の スポットライトを 浴びている 愚かさを きわ立たせる光り
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かわらない君の揺蕩う自我の底YouTubeでも流して寝よう
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ゴキブリに殺されたヒト、いや、刺されたヒトすら一人もいないのだが
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自分より弱いかれらを怖いと言う人間がたくさんいて怖い
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「怖いから殺しました」とたいていは殺す力のある側が言う
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なんでもない今日も いつか懐かしむのかなぁ
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貧困でクラスで私は持ってない今ハンドメイド一品を持つ
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盗人ラプターの濡れ衣を着てなお子らを庇う小さな英雄の骸
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余り糸招集すれば成し遂げる湯たんぽ袋にふっくらふれる
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パシャパシャと スマホで写真 撮る割に データフォルダは 家猫いえねこだらけ
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5年前 僕しか知らなかった星 手の届かない遠くの光
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人の質 落ちるを知る わが身かな 残り人生 取り戻せるや
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約束を守って君を傷つけた 嘘もつけない不器用な僕
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手を離したら駄目でしょう ヘリウム入りの風船とたいせつなひと
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意味もなく夜道を走る 心臓の血が火照るのに突き動かされ
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妖婦ファムファタル 洋書ほんで見たのは君のこと 揺れる振袖は蛇のよう
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そんなんで悩むくらいなら初めから始めなければよかったのにね
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じいちゃんが 死ぬ時空に祈ってて 僕も死ぬ時やろうと思った
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ほころびを見つけるたびに繕って 繕うためにほころびを探す
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いにしえの森にきらめく始祖の翼きみのお陰でぼくらは飛べる
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一向に進まぬ時計の針睨むいまだ聴こえる隣室の歌
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帰宅して 上着も脱がずに猫を抱き 上着を脱いでも猫を抱きしめ
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