「歌なんて知るんじゃなかったよ」つぶやく君に傘を渡した
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ビー玉をはじく指先の青よりもっと冷たい嘘をおしえて
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ちょっとだけ私と話した後の彼耳赤いのは気のせいなのか
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15分かけて考えた文面を送信するまでまた15分
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泣きそうな顔で夜道をふらふらと歩き出会った汚れた子猫
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やさしさにふれてあなたのいいところ真似をしたくてたまらない夏
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何時だって傷つくことのない世界なんてないからご飯おかわり
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祈ったら氷河の果てのだれかともつながりそうな予感の夜明け
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カルーアをコーラで割って午後7時冬の寒さを思い出せない
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薄まった君の色見て思い出す夜更けになびく長い前髪
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「人間」というものほんに煩わし生物いきものとして最高や下や
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ビードロの風鈴 チリリと君弾く 虹の粒子が縁側に舞う
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朝焼けに君は馬鹿だと問うたとて  こだまが無いのは海のせいかな
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大昔いつか誰かがみた夢の続きが書いてある日記帳
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セックスがうまくいかない夢を見た 照明カバー内のカメムシ
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五月晴れ 外にいずれば 眼裏まなうらの 敢へなき悩みを 陽の光に灼き
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百代はくたいも ただ見蕩れたし 瑞瑞し 百合リリィの蕾に 露したたるを
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関係の結び目といふにはあまりにも解きがたき個のここにゐて
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本心で﹁好き﹂を振りまく だがしかし あの人にだけ 言えないのは何故
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この夏の終わりは確かに恋だった その汗が滲んだその首筋の
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傷ついてさえいなければ 君はたぶん ギターを手にすることもなかった
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夢に見たあの人どこの誰だっけ思い出せないまどろみの朝
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心など 殺せたはずだ わたしなら ここにあるのは 死骸のはずだ
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始まりか終わりなのかは分からないチャイムが聞こえる高校の前
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くだらない繋がり ぜんぶ裁断す 君の糸だけ傷つけぬよに
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お布団の隅に大きい黒い虫 脊髄神経電気が撫でる
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鬱蒼の木立に蝉の産声が おはよう今日は新しい日だ
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この音に震えようとも言の葉に乗るはずもなし我を探しつ
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命尽き 海飛ぶ翼を失って 空に向かって沈むペンギン
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夏野草ガードレールを越えていく梅雨の歩の元揺る桔梗草
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