「笑って〜」と仕切り屋むすめの一声に シャイな息子らキミたち全力笑顔
10
脱出の緊迫映像 それぞれに役割果たし誇らし涙
4
どうせすぐ大人になるし今だけは「あう」しかいえない君を守らせて
7
青空を拒絶しているつもりなの?ゆれるカーテン波打つ孤独
3
恋した日君のためにと植えた種 そろそろ蕾 開きそうです
15
林立する個人の胸をつらぬいた通過儀礼は絶えて久しい
3
ハイターに心臓を漬け泣きながら取れない汚れをこすり続ける
13
完成をしないいのちを連綿と続けることが責務であった
4
ひととせを数えるたびにもう誰も大人にたどり着けないらしく
5
とぼとぼとあるくぼとぼとあふれてく すきもきらいもうたになってく
8
投資詐欺心身凍る冬空に亡き弟の分も生きねば
1
振袖の 女子見てみれば ギャルばかり 不良ばかりが 勝ち組なのか
2
振袖を 今年初見る 駅の中 元日でなく 成人の日に
5
老眼鏡鼻に据えたらビーズ手芸気持ち悪くて気づく母のだ
9
切れかけのキッチンペーパー 在庫さがし 待機させ置く 名もなき家事よ
9
寝こけてる ねこのおくちがあいている オヤツのあとのあさき夢見む
7
キミと過ごして浮かされた熱を逃さない魔法の瓶が欲しい
5
日常を詠むこと躊躇わずにおこう 有り合わせでドリア作りつ
12
助手席の起きない君に気遣って 静かに開けたピノが星型
10
人生が短歌だとして 下の句の十四文字は君を詠みたい
19
「大切な話がある」と駅で待つ 今日はヒールを履いてない君
7
ハンバーグ、目玉焼き、お茶、名も知らぬ人間に作らせている食
1
かたつむり真似してみんとコタツ出す 出れなくなった もうこたつムリ
4
まどろみの中にあらわる聖域は身の丈ほどの長方形
7
夜なのか、永く被さる影なのか、君の気分で今日を決めよう
4
なぜならの後につづく言葉には、「愛してるから」以外にないよ
4
カーテンの隙間から漏れる冬の光 氷の張った水底にいる
2
粉砂糖ふりかけたような色が好き ほんのり甘く曖昧だから
13
「進学は?就職、結婚、子は?孫は?」 一生訊いてな!人それぞれです
16
亡き母の姿浮かんで捨てられぬ薄紫の春袷せかな
3