夕立にべんがら格子の色も濃く うつろの蝉が水に流れる
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猫の餌選ぶがごとく母親の三度の飯のおかず考え
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薄橙うすだいだい色のかさをかぶる月 明日も雨よと囁くように
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消しゴムを ひろって君の 手のひらへ 乗せるか いっそ手を握ろうか
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本当は君と コンビニアイス 買いに行きたかった 夏は過ぎゆく
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暗い海 インターネットの波揺られ 今日も私は彷徨う人魚
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常夏の 心で君を 待っていた またあの夏で 君といたくて
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糾弾の 弾で手足が捥がれても 饒舌に語る 舌ある限り
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夏雨のジメジメ 恋のモジモジと 重なり雨は 二人を濡らす
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話し合いふたりで決めた分業制 ぼくが「作担つくたん」きみは「食べ担」
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コンクール 四半世紀の 絵画展 少年少女 思い出される
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夜ご飯 口いっぱいに 詰め込んで 麦茶で流し込んだ この恋
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どんな日も確かに愛はあったこと不意に浮かんで泣きたくなる夜
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人生で 君と交えた唯一の原点 恋は比例関数
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元妻へ マンション売れて 連絡取れず 嘆きし友の 声が聞こえる
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愛のない 夏の心は 軽いから 一人で  次はどこへ行こうか
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日本茶のセール今年もはじまりぬ あいにく一昨日通販しちゃった
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望むほど 遠ざかる君 初恋は 澄みきって今 夏空トーン
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古希前に 試験に挑む 我なれば 妻の励まし 身に染みるかな
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お風呂上がり 汗ひかぬまま ねこを抱く 毛だらけになる それも一興
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「おやすみ」と さみしくなっていってみた。 明日が来るまで 夢で逢いたい
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縮毛矯正かけたんですよお気づきになりましたか、いやぁ、ならないでしょうね
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この道をまっすぐ行くと月があり右へ曲がるとセブンがあるよ
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「洗濯物、畳むフリだけしとけ」忘れることなき 曾祖母の教え
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縦向きのリボンは 君の不器用で 愛情だから ほどけずにいる
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ほんとうの幸とは何か自販機のお高めのピーチネクターの味
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かまきりは祈るびいどろの翅を張りはねを失くしたあたしのために
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トマトサラダの栄養を考える リコピンってなんか あだ名みたいだ
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あなたの美しさに流した涙に 意味を与えて 雪灯籠の街
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目頭の熱さを冷ますキスをして 化粧水を気持ち多めに塗る夜
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