長らえば憂きよのくびききりもなく過ぎての春は夢のかぎりに 〈くびきりぎす〉
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年齢は 背番号だと教えられ 毎年刻む 永久欠番 / 沼倉さんより
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ごはんたべ ゴロゴロしては かまってと きたわりにすぐ どっかいくネコ
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時々の雨降る夜はいと楽し!フレフレ雨ふれふれ雨
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ダル重い下腹部に ねこが飛び乗って ドスンと痛い けどあったかい
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紫陽花をポンポンにして夜明けまで踊った記憶(存在しない)
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でもきっとダンカンさんはこんなこと望んでないと思う夕方
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牛丼の並は人並わたしたちとっくに人じゃなくてよかった
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冷房をいつ止めようか迷ってる五月にこれを迷うも珍し
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こたへなく よるのしじまに おともなし こらへしものの なみはよせけり
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逢わむ夜を思えば逢わむ飛ぶ鳥のはばたく夢につづく街の灯 〈あおばずく〉
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乗せられる。話に、あなたに、地下鉄に。 心地がいいね、身を任せるの
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逡巡に付き合う吾子は寝るまえに「歯がとれさう」と急に云い出し
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洗濯機壊れてわかるいにしえの労苦の上に生きてることを
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ワンピースかわいいけれどポロシャツの君がやっぱり一番好きだ
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水満ちてくるよう狭い前庭に背丈を伸ばすドクダミの群
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にじむ空 重なる不幸に ふで ふるへ  うたばかりの やぶれし心
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AIによる自動音声で」って その間きみは鼻くそほじるの?
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線香の 煙が揺れて 描く文字 きし二人へ 草書そうしょの手紙
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月涼し 私を救ってくれるのは 昭和歌謡とセブンスターだけ
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たまたまに人生で会う人々の想い出の影積み重なりて
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松そよぎ眼下に砕ける波頭 肩までじわる熱海の露天
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IDだパスワードだと小賢しい 癇癪おこし卓袱台返す
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はれにして、こころがおしまいはれにして、ぜんぶをすててむかえにもきて
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ひとさしゆびの下にある国にある家にいる中のひとりでしたね
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レシートのアイスクリームの値段見て意外と高くてつい二度見した
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微笑んで平気な顔して悪さして それでも二人なんとか幸せ
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ヨイショって 何をしたかったかというと しばらく間があく
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ヨイショって小さくかけごえかけて立つ 自虐じゃないよ れっつごーだよ
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もとよりも ゆくはてのなき こひのみち かへりもしらず ただゆくばかり
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