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満員の電車を降りる時にだけできる優しさ由来の花道
14
戯れ歌に黒人奴隷ありきその豚より易き一ポンドの労働契約
4
柿の木の 古木なる枝 柿ひとつ
涯
(
は
)
ての
熟柿
(
じゅくし
)
は 秋風にゆれ
7
うす雲に 駅裏の秋
人気
(
ひとけ
)
なく 草の鉄路に 弱き陽落ちて
10
道をゆく人の視線を一点に集める惣菜屋の行列
6
風強き 秋の川波 光跳ね 水へと踊る あの夏さまよふ
8
葬列の 家族の空に
百舌鳥
(
もず
)
は鳴く 血鎖滅び 高鳴く谺
8
幸薄き 老婆死して 俄雨 シャイロックどもの 長き葬列に
7
鎮魂頌朗らかひびく霜降の薮紫陽花にはなあらざればいなむか
4
鞭打のそびらを固めギブスありて白き胸像四肢のあらざり
4
しづかなるこどもあやめし兎の屍月光に艶かし弟切草は
7
流れ去る 終電のひと 見送りて 置き去りにされし こころ畳む夜
8
濡れていた 私鉄の街角 別れし日 あの夏の小雨に 声もなくわれは
6
あおむしとダイコンの葉を分けあって 味噌汁の具は今日は少なめ
49
橙のダチュラ砂地に吊り下がり砂に呑まるるまでを幾尺
8
青年の瞑る目蓋へ塩粒の置かる寄せかへす血潮聴きゐつ
5
無花果の蔕を剥き遣り置く卓に白釉の皿清浄なりて
9
やがてまた 曇り空暗く 降りかけて 秋雨の舌に 今朝も冷たく
4
この朝に 降る
繊
(
ほそ
)
き雨 濡れながら 冷気胸に吸い 生き直せし
朝
(
あした
)
6
足早な 思い思いの 夕暮れの 人の列にかかる 秋雨の寂しき
12
春先の冬眠明けの熊みたく不器用な人をただ許す布団
9
銀杏舞い 舗道の子らは 落ち葉蹴る 襟立つ冬の背 追風のなかに
6
あには羊の頭ををとうとはあにのかうべを擁きぬ 聖母子画
3
岩窟の母うらわかくふたり仔の遊びに微笑まふ偽家族
4
母耄碌しをさなごを呼ぶ黄昏に死をつれきたるその長じし青年
4
越えていく 雲も見えざる 万葉の 風に
雪崩
(
なだ
)
れる
紅葉
(
もみぢ
)
の峠
7
一陣の
旋風
(
つむじ
)
舞い
起
(
お
)
く 駅伝の 野菊揺らして 秋走る
女
(
ひと
)
10
道端の無人の店にて「三袋で三百円」と銭箱へ入る
5
『八十五歳の訪問診療医』なる鴎一郎氏は森鴎外の孫なり、励まされたり
4
綺羅星
(
きらぼし
)
の空に耀くはずもなし。「綺羅、星の如く」と切りて読むべし
3
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