旧友に新米送り北国のりんご届くを楽しみに待つ
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湯の川を 揃ってゆったり 魚たち 群がるところが 湯の湧くところ
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孫ら去り片付け終えたテーブルに二杯分のコーヒーを淹れる
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旅は無理 介護家族は 宅湯にて 草津・箱根に 道後温泉/「咲弥様」明日登別入ります
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気持ち悪そんなのばかりよこすなとアルゴリズムに文句をたれる
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泡だった黄色い小粒の花の香はいつものかどで秋も知らせる
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生臭く 青光りする 冷凍秋刀魚 まっぷたつに切る 私の想い
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「次は孫いつくるのか」と妻に問う 目配せの先 かぼちゃが笑う
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つかの間の帰国の友と過ごしてる 番外編のような時間を
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ダイエット 小鳥の餌と冷麦茶 プリン片手に母の笑み
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赤色が似合うと言われた パーソナルカラー 当たり前じゃん、推しのメンカラ
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君のそのポケットに入れた涙ひとつそっと見ている夜の街灯
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すべて世は黄昏たそかれの中 おちてゆく言の葉に游ぶ音の葉に游ぶ
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吐く呻きが静かに夜に溶けていくマックの袋ぶら下げる道
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いつからか友仲間から遠ざかり一人宇宙を彷徨っている
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いらっしゃい何度もお客に唱えるが我はそんなに来て欲しくはない
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店に来た恋人たちが気になるが店員だから気楽でいい我
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閉店後月に降り立つ飛行士が見上げた如く広がる星空
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山里の土産真白き濁り酒 一人手酌す秋の宵闇
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おはようと言えばおはよう返りくる 家のぬくもり老後のふたり
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あの道の グラジオラスより 白きシャツ   君の視線の ただ 眩しくて
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秋麗ら 母の写真と 話す日の 多くなりけり 彼岸花萌ゆ
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トン、パタ、トン 室外機叩く雨音に守られ眠りに落ちていく我
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君の歩く道が青信号ばかりでありますように
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いつまでも仔犬じゃないと言いたげに抱っこを少し嫌がる素振り
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昼下がり プール終わりの現代文 ノートの隅にミミズ這う跡 /「暗号」
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しっとりと雨ににじんだ 街灯が 金木犀の夜を照らして
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ひと足先 内々定の 友笑う 就活したくない、ないていー?/「就活」
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一日中汗流しただろうおじちゃんの冷えたビールが誇らかに立つ
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いつの間にか風の便りもなくなった友が残した本だけ 売れない
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