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朝顔が 今頃に咲く 夏庭の 色枯れるごと 秋は深まり
10
姿なく 消えたご近所 老夫婦
何処
(
いずこ
)
にゆきしか 知りたくもあり・なし
8
林檎食う くしゃりくしゃり 咀嚼の
音
(
ね
)
寂しき生物 われに息づけり
9
棚雲に いちめんの茜 色づきて 人の世の夕焼け 美しきこと今更に
9
あなたへの愛に溢れた今週も深夜の駅はやっぱ哀しい
17
直らない
玩具
(
おもちゃ
)
抱きしめ 泣く孫に 根負け
爺
(
じじい
)
同じ物買い
16
待ちかねた その日の秋を 鈴虫が りりり、と鳴いて 夜の縁側
7
夜の車窓
微睡
(
まどろ
)
む若き母 その胸で 夢にあやされ 眠りつ笑う子よ
11
篠突いて 橋ゆく傘を 叩く雨 欄干
靄
(
もや
)
る 五条橋夜更け
7
だんだんと早くなりゆく待ち合わせ昨日と少しちがう夕焼け
16
会計でまごまごしてる老爺と父を重ねて目尻が滲む
20
柿の木の 古木なる枝 柿ひとつ
涯
(
は
)
ての
熟柿
(
じゅくし
)
は 秋風にゆれ
7
仕事として米の選別知る夫はいまだ田にある稲穂を憂う
16
うす雲に 駅裏の秋
人気
(
ひとけ
)
なく 草の鉄路に 弱き陽落ちて
10
風強き 秋の川波 光跳ね 水へと踊る あの夏さまよふ
8
葬列の 家族の空に
百舌鳥
(
もず
)
は鳴く 血鎖滅び 高鳴く谺
8
幸薄き 老婆死して 俄雨 シャイロックどもの 長き葬列に
7
流れ去る 終電のひと 見送りて 置き去りにされし こころ畳む夜
8
濡れていた 私鉄の街角 別れし日 あの夏の小雨に 声もなくわれは
6
とんがらし色した夕陽落ちる秋若かりし日の驕りにも似て
16
刈り取りの済みし田んぼにじっと立つ陶器にも見ゆ白鷺一羽
19
やがてまた 曇り空暗く 降りかけて 秋雨の舌に 今朝も冷たく
4
この朝に 降る
繊
(
ほそ
)
き雨 濡れながら 冷気胸に吸い 生き直せし
朝
(
あした
)
6
足早な 思い思いの 夕暮れの 人の列にかかる 秋雨の寂しき
12
銀杏舞い 舗道の子らは 落ち葉蹴る 襟立つ冬の背 追風のなかに
6
越えていく 雲も見えざる 万葉の 風に
雪崩
(
なだ
)
れる
紅葉
(
もみぢ
)
の峠
7
一陣の
旋風
(
つむじ
)
舞い
起
(
お
)
く 駅伝の 野菊揺らして 秋走る
女
(
ひと
)
10
病床で歌う「ふるさと」ゆるやかに かのやまの
彼
(
か
)
を
忘却
(
わす
)
れゆく人
39
道端の無人の店にて「三袋で三百円」と銭箱へ入る
5
『八十五歳の訪問診療医』なる鴎一郎氏は森鴎外の孫なり、励まされたり
4
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