Utakata
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どの家も玄関明ければその家の安堵と云ふ名の匂ひがありて
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雨あがり 澄んだ夜風に 洗われた 桜の枝に 蕾が一つ
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一列にまとまるムクドリ鳴くを止め首傾げ見る駅向かふ人
37
なんということもない事なんとなく上手くできないそんな今日です
37
難しき講義のあとの自販機でコーンポタージュ選ぶ冬の日
37
湯気たてた丸ストーブの大やかん 加湿器ミストに消へし吾の昭和
37
想い出は街をぐるりと歩いた日 兄の遺した紬をほどく
36
柚子玉と四つ割り南瓜買ったから年末に向けひとマス進む
36
東北の冬の青空ありがたし磐梯山の雪の輝く
35
「家じまい無事に済んだよ父さん」と墓に供える白い秋桜
35
昼下がり編み物しながらイカ大根ことこと 冬の至福のひととき
35
旅立った 家族を思ひ 見上げるは 星が輝く 新月前夜
35
触れる縁 見るも聞くのも 我が内に 肩先に
灯
(
とも
)
る ペテルギウス
34
小
(
ち
)
さき手に希望いっぱい握りしめ父に
抱
(
いだ
)
かれ
眠る赤子よ
34
雨やみて半日静寂その後に連れて来るかや本物の冬
34
南天と たわわに実る 柿の木が 過疎の田舎の 聖夜のツリー
34
横文字の洒落た料理は苦手らし冒険いらんと夫は言ふなり
33
木の間より差し来る朝日サンゴジュの僅かに残る熟れし実照らす
32
八朔
(
はっさく
)
がおっきな箱で届く朝 フライング気味サンタ姉さん
32
清しきは冬の日の出の
眩
(
まばゆ
)
さよ 干し物しつつ息白くして
32
冬眠をする必要はないのだがあれもこれもと美味しくてつい
32
朝からの雨は昼には雪となり追い越し車線を行く車なく
32
かぼちゃ煮の焦げる間際の妻の技 湯気の向こうに冬至は更けぬ
32
車内には 優しきハンドクリームの香り漂ふ 冬の通勤
32
乾燥し痒み止まらぬ冬の肌ニベア青缶手放せぬ友
31
切なきや闘病重ね逝きし
妹
(
こ
)
の笑顔が浮かぶ氷雨降る夜
31
桃あわく真冬日に咲くアサガオの小ぶりな花のひと日の笑顔
31
午後の径
健気
(
けなげ
)
に咲きし
冬薔薇
(
ふゆそうび
)
ほのかに揺れて心和みぬ
31
雪山とツルツル路面で引きこもり隅々たしかむ冷凍庫など
31
新月の今宵の空を 埋め尽くす雨雲は 冬の街を
清
(
きよ
)
むる
31
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