コーヒーを丁寧に淹れる午後だからきっと世界はぼくらに優しい
18
「甘いな」と笑う夫のその口にそっと重ねるカフェオレの泡
17
深夜でも煮沸している哺乳瓶  乳のにほひに父となりゆく
15
山茶花の 木陰に潜むミズヒキの 小さき赤に雨粒濡るる 
15
不本意に微笑む日なり間違えて名前を紹介された時にも
11
コロコロと好きになったり思い出す 常に秋空常に愛しい
11
人はみな心に夜叉を薪能 面(おもて)の奥の涙は知らず
10
何もかも捨てて出たいな一人旅ほんとのわたし見つける旅に
9
休みの日 あなたの好きなお菓子焼く  それだけのただ幸せな日々
9
久々の食べ放題の焼肉で我が身の老いを思い知らされ
9
舌を灼く堅いもめんの湯豆腐が 胃の腑に落ちて秋の夕暮れ
18
法被着た同級生のりりしさよ 還暦過ぎてもあだ名呼び
9
月に書くインクの滲み震えごと手渡せるなら、友への手紙
11
いつもなら夕飯使い優先の忘れたひとつで久しゆで卵
12
嘘つきの君を好きだと笑ってたとっくに本心知っていたのに
8
明日参る お墓にねむる 父思い 好物食べる おやつ菓子パン
8
優しいと得をするのを知っている 知らない人がいないくらいに
7
そっけない あなたの返信 せつなくて かわりに月に おやすみを言う
20
幸福ももちろんあったただいつも私の横は空席だった
9
統廃合された母校は今ホテルあの日の教室今宵の寝室
8
送電線の 上を歩いて 行けたなら 迷わず行ける 君の家まで
11
じゃあ、っと  簡単に君が言うから  僕の部屋だけ  夜が明けない
6
父の言う「星の死を君はみていると思え」を胸に抱き今は一人夜をゆく
6
とりあえず 何もかけずに 食べてみて 俺は静かに ポン酢を置いた
6
Be動詞 ありおりはべり いまそかり 単語でさえも 五七五(リズム)を刻む
6
秋になり 離れて暮らす 家族には こんな気温と 寒いマウント
6
変わらない玄関にいたアゲハの子日常破る色鮮やかさ
12
畑より花火大会見ながらのバーベキューには採れたて野菜
13
秋祭り コスモス笑う 子ども達(ら)と こんな平和が 続きますように
14
てのひらをなぞった「すき」の二文字は僕の目だけに灼き付いている
6