どの家も玄関明ければその家の安堵と云ふ名の匂ひのありて
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旅立った 家族を思ひ 見上げるは 星が輝く 新月前夜
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なんということもない事なんとなく上手くできないそんな今日です
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難しき講義のあとの自販機でコーンポタージュ選ぶ冬の日
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湯気たてた丸ストーブの大やかん 加湿器ミストに消へし吾の昭和
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柚子玉と四つ割り南瓜買ったから年末に向けひとマス進む
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触れる縁 見るも聞くのも 我が内に 肩先にともる ペテルギウス
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「家じまい無事に済んだよ父さん」と墓に供える白い秋桜
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雨やみて半日静寂その後に連れて来るかや本物の冬
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昼下がり編み物しながらイカ大根ことこと 冬の至福のひととき
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南天と たわわに実る 柿の木が 過疎の田舎の 聖夜のツリー
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横文字の洒落た料理は苦手らし冒険いらんと夫は言ふなり
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さき手に希望いっぱい握りしめ父にいだかれ眠る赤子よ
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冬眠をする必要はないのだがあれもこれもと美味しくてつい
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坂の上たわわに残る柿の実が時雨れる街の差し色となり
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会ふたびにズンと伸びたる孫背丈 爺と背比べ年の瀬待ちて
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車内には 優しきハンドクリームの香り漂ふ 冬の通勤
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笑顔にてイオンの午後をかっ歩する若さが武器のまぶし世代よ
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八朔はっさくがおっきな箱で届く朝 フライング気味サンタ姉さん
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清しきは冬の日の出のまばゆさよ 干し物しつつ息白くして
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午後の径健気けなげに咲きし冬薔薇ふゆそうびほのかに揺れて心和みぬ
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メイクした特に用事はないけれど化粧の甘い香りがうれしい
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朝からの雨は昼には雪となり追い越し車線を行く車なく
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かぼちゃ煮の焦げる間際の妻の技 湯気の向こうに冬至は更けぬ
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コロコロと 余りし柚子を 水洗ひ 遺影の父と 柚子割り焼酎 
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夫にもQRコードつけたもれ トリセツ不明で五十年過ぎ
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桃あわく真冬日に咲くアサガオの小ぶりな花のひと日の笑顔
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雪山とツルツル路面で引きこもり隅々たしかむ冷凍庫など
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新月の今宵の空を 埋め尽くす雨雲は 冬の街をきよむる
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灰色の空が心にのしかかる得体の知れぬ不安拡げる
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