転ばぬよう自転車ノロノロ走らせて特売品と帰る秋の日
48
無心にて この叙景短歌うたに詠みたれば そよよの風も心に吹きぬ
42
霜月の賀状じまいの挨拶文 人の断捨離したよなされたよな
41
日の暮れの西側座席の眩しさが不意に懐かし午後の踏み切り
39
在りし日の交換日記 思い出の眠る本棚淡き陽の差す
37
いつもなら つがいの雉鳩 ぽつねんと 今日は素直に ごめんて言うよ
36
匂いたつ香に誘われて駅そばの暖簾をくぐる乗り換えの間に
35
行く道は次第次第にくらくなり浮かんで消える面影増えて
35
久々に犬も食わないナンとやら 秋刀魚の塩焼き二人で黙食
33
放物線。ダイヤモンドを 駆け回まわる 宇宙のような 素粒子のよな / 野球
33
夕間暮れ 金木犀の香を運び 洗ひたての髪を撫ぜる風
33
愛が欲し ぬくもり欲しともがいても 応えてくれぬ毒母はは 横たわる
32
ペチュニアの花の終わりし癌センの いつもの席にあの人ゐない
32
一段と 深まる秋の 早朝は ポーチドエッグと 珈琲淹れて
32
妻と父 眠るお墓に 菊供へ 母がつぶやく「ここは寒かろ」
32
昼遅く 立ち食い蕎麦屋 隣席は 動画をみつつ かき込む女性ひとあり
31
悪口をさらっと流す君と飲む少しやさしいブラックコーヒー
31
紫の朝顔ひとつ残り咲く黄の葉をゆらす秋の夕風
31
サイゼリヤ パスタつるつる孫のに顔ほころびぬ財布のばあば
31
薄陽差す野菊咲く道散歩道楚々と咲く花揺らす秋風
31
待ちに待つ無花果実らず茂る葉をすけば高きに透明な秋
31
まだココア買ってないんだ いきなりの冬の寒さはちょっと勘弁
31
主人あるじ待つ薔薇の赤みの増すほどに空き家の庭に秋深まりぬ
30
介護ってホントにできる?思うけど 寝顔を見ると切なくなるわれ/実家にて
30
内に秘め緑の芯に黄のまるく秋明菊の蕾膨らむ
30
冬を待つ田畑に休む白鳥の鳴きかわす声ふるさと恋うか
30
初雪が北海道で降りましたこちらはストーブ初の運転
30
流れゆく時間を止めて風になり人情深き縁者召さるる
30
ママを診るあいだ預かる赤ちゃんを抱けば懐かしぬくみと重み
29
指先で秋の深まり感じ取るスマホ画面もタッチパネルも
29