風を避け駅の待ち合ひ来し人は寒っと二回くぐもる声で
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暗き朝 仕事へ向かひ 夜帰る 自宅の秋を 知らぬ…霜月
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午後に聞くオルゴールの曲優しけり尖りし吾を撫でるが如し
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音もなく 冷たき時雨しぐれ 舞ひ降りる 声のなき空 冬のはじまり
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富士山は初雪浅く地肌見せ墨絵の筆のかすれの如し
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桜葉さくらば 一葉ひとはのこらず 落ち果てて 届かぬ手紙 どどと着くよに
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植え込みに 雨粒強く 打ち付けて 周りの音消す 静寂な時
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忙しくもペットに和んだ子育て期 亀の名コナン楽し昔日
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グラデーション見惚みとれてしまう朝焼けに 得した気分休日出勤きゅうしゅつの朝
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半月でコキアの色は赤み増し季節の進み確かむ秋の日
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いつもより三割増しの大きさで月は静かに側に来ていた
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金木犀もくせいの香る陽なたに黄蝶二羽ひらり束の間の秋とたわむ
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切り花のコスパ日割りで考えるそんな僕にも秋のひだまり
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木枯しの一号雲を掃き清め澄みし御空に十三夜月
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あの山も この山もまた 唐松の 黄金おうごんの山 ドンと座したり
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チャーハンを おかずに白米 食べた君 同窓会で 今も伝説
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秋の句に収まりの良き語彙探す時間かかりて雲流れ往く
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もうなにも咲く花のなき花畑それでも雪虫舞いて賑わう
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葬儀屋のネオンサインは煌々と大河の様な国道の脇
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手を洗うときに袖口濡らすぼく「アホやな」と言う君が恋しい
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吹く風はメタセコイアの高みなる梢に冬の気配運びぬ
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木犀の香る坂道一歩づつ杖を頼りに空仰ぎつつ
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赤貧の 中にあっても 質流れの ラジカセを買う 昭和の父よ / 文化の日
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友の如 感性似たる短歌うた読まば 笑ひや迷いじわりと刺さる
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秋晴れの 岡崎の街 風にのり ジャズが流れる 大人時間に
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あおむしが のたりのたりと 歩き行く 色鮮やかに 衣をまとひ
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朽ちし葉は螺旋らせんえがき舞ひ降りる 露天風呂から眺む晩秋
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秋風の淡き夕日に密やかに秋明菊は細き手をふる
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十七年たくさんの幸せ有難う! 愛犬キミのお家よ 骨壷を置く
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そこはかと寂し雨夜を慰める床暖房のほっこり加減
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