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フード越し風が鳴るのを聴いている星瞬いて流れて消えて
38
雨あがり 澄んだ夜風に 洗われた 桜の枝に 蕾が一つ
36
老いて目も うとくなる日々 縫い物はせぬが料理はまだまだいける
35
色褪せし表札にある取り消し線 故郷に残る旅立ちの日よ
35
冬の夜救急に立つ半袖の温きナースのみ手にゆだねる
35
ベランダで「どこから来たん?」ひとり
言
(
ご
)
つ 日なたの
丸
(
まろ
)
き てんとう虫に /九階
35
窓帷
(
カーテン
)
を開ければ 冴へり 冬の朝 細き残月 見ゆる青空
34
寒さ増し 形見の衣
纏
(
まと
)
ふ冬 妻の帽子と 父のジャンバー
34
夏からは病に伏すという君の住む街は雪 今日も明日も
33
軽々と大き除雪車あやつりて百人力の隣の亭主
33
蝋梅
(
ろうばい
)
の 花芽迎へし 山寺に 母の手引きて 歩む石段
33
六十路なる吾の通信簿 理音四 国美社が三 数体下がり二
33
腹を押す医師の温もり身に沁みて眠りに落つる冬ざれの夜
33
二軒分 家事と介護を こなすには 知恵を絞りて 手抜き息抜き
32
いなり寿司けんちん汁に串揚げを作り孫待つ猫とじゃれつつ
32
東北の冬の青空ありがたし磐梯山の雪の輝く
32
想い出は街をぐるりと歩いた日 兄の遺した紬をほどく
32
ピークなる疲労の夜に浮かぶ星やさしいオリオン私を照らす
31
柔らかな光あふれる雨上がり 心地良さげに
冬薔薇
(
ふゆそうび
)
揺る
31
年六度 季節の行事を飾る棚 心ほんわり温き場所なり
31
青い鳥探したけれど見つからず帰りに白い文鳥を買う
31
金色に 棚引く雲の 切れ間から 冬の夕陽が 光り輝く
31
寝つかれぬ
虎落笛
(
もがりぶえ
)
をも聞こえぬ夜三十一の糸編んではほどく
31
ほお紅く染めて抱きつく妹が本当はいそうな雪の降る午後
31
愛犬の逮捕に走る 転がったワインのコルク咥えて逃げた
31
一列にまとまるムクドリ鳴くを止め首傾げ見る駅向かふ人
31
どの家も玄関明ければその家の安堵と云ふ名の匂ひがありて
31
無為
(
むい
)
のまま 降りつづく雪 こうなれば
有為
(
うい
)
であろうか 飛ばない飛行機
41
ガンダムのプラモを買った
玩具屋
(
おもちゃや
)
も消えた故郷の静かな師走
30
雨後の午後 和らぐ
寒気
(
かんき
)
曇天の
下
(
もと
)
南天に 光りぬ雫
30
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