〈サクラチル〉 電報を知らない僕らの 静謐さを保つ不自由
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いつかあなたが打ち上がる時一等素敵なかたちでありますように
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歯車と星を越え往くグルコース 友たる賢者の元へ降り落ち
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日曜日 予定を消した その代わり 寝転んで飲む ルイボスあちぃ
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背を伸ばしアサギマダラの飛来待つ凛と咲くのはフジバカマかな
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泥パックなんてしなくていいんだよ目尻のシワが好きなんだから/泥
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ワレモコウ紫苑もススキ散り行きてフジバカマだけ背丈を伸ばす
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人前で朗読なんて初体験ドキドキ隠し平明に読む
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スーパーで夫婦めおとの客に行く道を吾は塞がれきものなりや
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会話して言葉出てこず母のよになるかと怖い短歌捻ろう
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ねこパンチ どつきあうけど ほんとはね なかよちなのよ ポコっていうけど
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好きすぎて コミック新刊未開封 最終巻の予感に慄き
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チェーンソー朝から響くさくらんぼ切り倒しては消えゆく産地
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夏を経て変わった何かを聞かれればあなたを知って自棄酒知った
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急ぎ旅なれどコスモス風に揺れ吾を迎える ふるさとは秋
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出来る限り自分の事は自分でと心に誓う難病患者
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不可分のふたりなりけりかんづめの鰯のやうに身を寄せあつて
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仏壇前すすきなど秋の花まぜざしで生けて線香立てる
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高額ともはや躊躇まよっていられない新たなヘルパー配食弁当
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愛情のブレスレットローズクォーツに願い込め 投函せしポストをつと拝む
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あるもので間にあわせてく暮らしかな ないならないでなんとかなるよ
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夏の服洗えないまま放置していつのまにやら秋になってた
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一年に数回ほどの後悔をいまさらにして秋風の吹く
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細る目をさらに細めて見ゆる孫 後ろ姿は妻の背を抜き
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取り皿に覆いかぶさり幼な子がスパゲッティの赤を掻き込む
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美しく刈り取られゆく田に集う白鷺の群れ秋を告げをり
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手の甲を 枕にしている 毛むくじゃら しびれの痛みも 愛おしい哉
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天井に届くこの手この指は明日朝陽と出会う約束
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キッチンの 窓外吊るすミント束 思いがけずに運ぶ涼感
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汗かいてメイク直しで鏡見る 鼻の頭がカサカサだ 秋
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