山椒の実ひとつぶ口に入れてみる 舌と唇しびれにしびれ
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ぬか床に実山椒まぜて半夏生 ひりりと香り湿気払ひぬ
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カレンダー猛暑追いかけ七月に 雨も降らないああ半夏生
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職業を もし聞かれたら 迷いそう 学生・バイト・ 愛の探求者ラブハンター
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干るきみは見たくないのと手をかざし蜘蛛とふたりで夏の白昼
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炎天下急に曇りて雷鳴もサッシ隔てた別世界かな
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合掌し体を水に叩き込む 五体投地のブレスト平泳ぎでゆく
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精一杯かいな伸ばして水捉え クロールで漕ぐ人形ひとがたの舟
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水底に私の影が泳ぎゆく 時を遡行し少年のように
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付き添われデイケア施設見学す拙い足に希望の光
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非日常 揺れる境界 甘くこえ ごっこに本気 沈む火曜日
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七月を迎えた途端、灼熱を許せてしまう。やっと梅雨明け。
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夜半には風が強いと聞いてただ彼の足音を耳で見つめる
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騙される訳などないと一気飲むノンアルビールの喉越しは まる
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プールから はしゃぐ幼児の 声を聞き 西瓜とメロン 夏の思い出
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毎日が 己の罪を 抱えつつ 少しずつでも 罪から離れ
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十字架を 背負いて歩む 人生に 疲れ果てては 磔知らず
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ロビーから 子供の声と ペンの音 短冊作りに 微笑む翁
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悲しみを 一つの乗り越え 知る度に 喜びの味 ひときわ強く
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欲望が 人の幸福 食いつくし 誘惑のまま 奴隷のように
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難しいき ことは言うまい この暑さ ぼーっとしてる 脳みその中
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意味もなく 目的もなく ただ生きて 死んでゆくのが 我慢できない
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寝ころがり歳時記ながめ小休止「昼寝」は夏の季語だと知れり
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文月や紙にさらさら流し書き今より先はアナログ帰り
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蒸し暑さに 身体と気力が溶けていく 救いの神かな こおりあずき
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水面にも うつらぬほどに 静かなる わたしの声の かけらがひとつ
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不安げに揺れたる君の瞳をば 僕の両手で覆って、おやすみ
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肌布団 お腹にきゅっと巻きつけて 仮眠するなり 歯医者いくまで
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タブを消すたびにあの日が眠ってく 消す、消す、消さない やっぱり消そう
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ハム、チーズ、トマトと昨日の後悔をパンで挟んで咀嚼する朝
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