大きめのハの字にとんだ靴の子はイの字でねたり「ハイ」とか云えよ
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東風こちふかば花びらつどふ水たまり名をしりたくてすくふひとひら
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誤作動で闇夜にひかる赤ランプ警備員待つ春のまにまに
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ふと見れば手だけ真黒く日焼けして…春の日差しを甘くみていた
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霧雲の緞帳開き富士立ちぬ そちこち聞ゆつ国の「嗚呼」
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暗やみの 星をさがして ダムへゆく もう逢えぬ人 見ていてくれる
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病床の 父の手握る 母 涙はは なみだ 伴侶の慈愛 初めて見せり
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お互いの 過去の話を し尽くして 未来の話を し始めている
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今日もまた 互いの引き出し 開けるけど あの引出しは わざと開けずに
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風光る 隣家の庭の 赤き薔薇 見頃迎へり 連休初日
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二十歳なる孫娘とのツーショット吾の生涯の詰まる顔なり
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川沿いに名残り桜と菜の花が二色で描くデクレッシェンド
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早朝の日差し出始む公園に生命いのち満たして鳥はさえずり
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散り落ちる 桜のシャワー浴びながら 早足の春別れを惜しむ 
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友のくれしたらのめこごみうど並ぶ夕餉は津軽の春御膳なり
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レンズ越し微笑む顔に色香る 切り取る刹那薔薇色の恋
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どこまでも膨らむ雲突き破る月枕元の影忘れるばかり
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新緑の語り部たるや藤の花 フジ色差し色読点のごと
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歳重ね 高望みなど しないけど 求める解に 近づきたくて
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夏物の新品スリッパ素足履き足裏違和感夏を実感
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ストーブを 片付けようか もう一度 灯油を買うか 葛藤の日々
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春風よ 恋する君の 背を押して そのまま僕は 君を追わない
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ランナーが並んだ朝の川沿いで刻む鼓動が道を彩る
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青光の中たゆたう赤海月 血は赤く 耳鳴と潮の音
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咲き惜しみポツリポツリと花ひらくおおむらさきはつつじの女王
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写真には 悠然と消えた、桜色。革靴も少し、履き慣れてきて。|生跡
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初めての「はじめまして」は一度だけ もう数えてない何回目かは
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心寄す 君想いしは 面映ゆい 春の夜長に 恋蛍かな
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何も見ていないふりして毎日をやり過ごしているのに血まみれ
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春の夜の 空に佇む おぼろ月 霞し星も 嫋やかなりて
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