夜光貝のカフスボタンを尾根線に沈めながらに天を降りき
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ワルキューレ 傷はもうかくさなくていい 地球に残る宇宙飛行士
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水仙が街路木を圍う。縁石に頷をのっけて吸う NO2
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ひつじ雲 一匹づつが聞いている。工事の声や、鳥の詞を
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その気なら画面を二タップするだけでいとも容易くつながれるのに
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脇の下うずめる小さなあなたから聴こえるいびき あばたもえくぼ
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安心と心配不安の間とを反復横跳びし続けるぼく
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これあげる 手に落とされた チロルチョコ 疲れた体 甘さで癒す
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携帯を拾った 手の中のものには言葉が届かない現象だ
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夜海月 海に漂い 月明り 耀き白き 衣(い)を揺蕩わせ
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いい歌を 思いついたのは いいけれど 忘れてしまう ことは残念
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灼熱の缶で指が火傷する 眠気覚ましに買ったコーヒー
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かみさまに許されないまま生きてゆく長い旅路を手探りで往く
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お徳用 永遠に冷凍庫に眠る 一キログラムのごぼうサラダが
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夜九時に疲れて即席麺茹でる 気持ちばかりの玉ねぎ添えて
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ユニクロで買ったアウターユニクロで買ったインナーズボン靴下
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コロナ禍に甘えて遠くの友人に会えずに寂しいふりをしている
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やらないと いけないことは したくない やりたい事も とくにないけど
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ランドルト環のあいだに挟まれば 「ご注意ください ドア閉まります」
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たまに買うピザポテトくらい気まぐれに 私を襲う深い絶望
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ひえびえと夜のしじまを回遊す先行き見えぬ翻車魚マンボウの街
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教室に並んだ背表紙待っている親友のごと君の笑顔を
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濁流よ吾をさらってくれまいか宵待草の河のほとりで
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そのすべて己がみぬちにならしめむいとし父母骨を食むひと
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生きるなんて 無駄な労力 希望とか 夢とか光 滅びてしまえ
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テレパスの彼女が欲しい僕の愛重くなったら捨てていくよう
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信頼は積み重ねと言うけれど 1段目が作れなくて話にならぬ
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今日明日と 生きる力を貯めるため バーカウンターに 肘置き祈る。
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大きくて温かだった父の背は愛と哀とを教えてくれる
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「手作りのチョコなんてさ」と言うひとの口を塞いだ深夜のカレー
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