蛇口の下にたっぷり苔が生えていて肺胞みたいな花を咲かせる
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総身を銀に光らせ落ちていく毛虫 怒りで詩を書いてみろ
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刈り取らるる松本智津夫のその御霊みたま 魔になる神になる人になる
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旅先の見知らぬ路地の道祖神 欠けた頭でこっちを見ている
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薬指、貴方と僕の信義則 右手にうつし くびき忘れる
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カレードリア バターとチーズを追加する 豪華な冷食おなかに染みる
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大雨の中 子と買い物かごいだき駐車場から駆け込む母親
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パチンコはうつ病によいと聞くけれど 本当なのかまだ試せない
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田舎ちほう都市 老人ばかりのパチンコ屋 心の老いた我が通らむ
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幾度となく殺した男の顔が今 鏡の中で微笑んでいる
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釣り針に小さなエサをつけている時は器用に見えていた父
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結婚が五年契約だったなら 二度目の更新はかなり悩むな
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乳呑み児の指折る音をアラームに 首をもたげる月曜の朝
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キーボードを時折たたく手の甲の 滑らかなるを飽かず眺めてる
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時も空もあはひにありて妙となり人のあはひを濃く薄くする
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転がらず程よく止まる意志を持つ六角形の鉛筆の性
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雨上り淡青色の星屑をなほちりばむる額あぢさゐかな
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音の無き時雨に濡れてあぢさゐの淡青の色みづゑとかはる
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百万のひとごと寄りてひと燃やす 死蝋で正義灯されている
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雨降って固まる地面もはやなくコンクリートを滑る雨粒
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生命のみなもと求め探査機は薔薇色のイソギンチャク潜る
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床下に今夜も死んだ母の這う音が聞こえる安堵して眠る
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ヒヒヒヒヒ……指名手配犯を見ました。自分で自分を通報してみる。
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君といた頃伸びた爪を保管した瓶に詰まった甘い思い出
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天の河逢えずとなれば地の河もと 願う二人か橋よ落ちろと
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空間も事象も時ももろともに夢にお別れ さらばささらば
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赤色にかぶりついては種飛ばし 汁付きの手をすする昼過ぎ
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ビニール傘「そらみたことか 曇天から 君の怨念が降りだしたぞ!」
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星ほどに 輝き放つ 街の陽は 星より綺麗な 夢で溢れる
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雨上がり 道路が一息 この匂い いったい何を 食べていたんだ
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