けざけざと 雲居くもゐに浮かぶ久方ひさかたを さしあふげれば冬はとなりぬ
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今日もまた豪邸に住む演歌歌手が庶民の心を歌っているよ
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この年は当たり年かや柿の実は頂きもので毎日楽しむ
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浜辺にて振り返り見れば風紋の鱗を乱せし吾の足跡
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ゆ風の 赤む楓葉かへではひるがへし あかねとまじり秋は暮れゆく
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立冬と聞けば心が寒くなる 軽いコートで空は秋晴れ
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どっかりと胡座あぐらをかいて防風ぼうふう掘る夕餉の食卓浜辺の香る
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望月にもち搗く兎は杵もちて もち 上げ下ろせば草餅のもち
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距離をとることを許さずいまここにおれを縫い止めるほそい結晶
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「足りない」と 努力の量を 指摘する "足りない"頭は 貴方についてる
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白線をまたげなくなるその日まであなたの隣を歩いていたい
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今日の勉強か、明日の授業か。選べぬまま来る丑三つ刻かな
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牡蠣缶だ ドンキに売ってる 「ド」の文字の。めちゃうまだから 買うが吉だぜ
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パズル誌を二冊だけ持つレジ列の同年輩はボケ対策と
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晩秋にのんびりこおろぎひとり鳴き無事に伴侶を見つけられるか
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大好きなボロボロの毛布 あなたが来るからあっさり捨てた 人生ってそんなもの
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明け方の 冷たいキスは マルボロの 煙を残して 出て往くあなた
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甘怠い 水煙草シーシャの管の 付け根には 蘭国産ネーデルラントの 青いかたまり
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面接で 落ちたとナイフを 握りしめ 死亡動機は 完璧なのと
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今日もまた 飛び降りたいと 鳴るLINE 明日は駅の ホームでしょうか
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やり捨てて 構わないけど 相応の 別れ文句は 吐き捨ててよね
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疲れたと 遂に貴方が 呟いた 自傷の日々も これで終わりね
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ダイアリーに ‪✕‬を刻んで いくように 手首を掻き切る 無表情の目
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死にそうに なれば私も 今だけは 生きてて良いの あなたの世界
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口数が やけに増えたね この頃は ピンクの空き缶 部屋を埋めゆく
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目が覚めて 死ねなかったと 君は云う 手首を切るなら 家を出てくれ
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世の中はバカばっかだから寂しくて新宿の茶屋で君に会いたい
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曖昧な言葉で言えば何となく嫌いではないこんな毎日
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俺と猫とブルーハーツと本棚とついでに君が居るだけの世界
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好きな子を幸せにすると言う君を好きなことだけ言わずに笑う
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