春を待ちきれずに枯れてなくなって冬に留まる晴れ知らぬ僕
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紫陽花も千日紅も向日葵もキミとの日々を隠し持ってる
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私がねきみのひとりめの信徒なら生まれた日から暦をつくるよ
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足早に過ぎ去る人混み都会では 時間の流れが違うのだと知る
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新しく買ったイヤホン デザインを 優先したけど音も良かった
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子が巣立ち 仕事帰りに 買い物し 巣に帰る鳥 眺める夕べ
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うつろいて うつろわぬもの ここに有り それをたしかな愛情といふ
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明日でもお菓子をアテに飲もうかな 連休中に桃酒をあけたし
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手に取った本の重さで綴じられたことばの海の深さをさぐる
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世のために役職数多あまた引き受けて叙勲縁なく傘寿となりぬ
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瓶コーラ昔懐かし王冠を遠巻きにして小六の孫
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されどとて とれぬものが 流布してく 泣く泣く行過ぎた諭吉たち
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6本のパックのビールを買って待つ 貴方と一緒に楽しく飲める日
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自供する罪がないのが残念に思えるような断崖絶壁
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胸の奥 大切な人を送るたび 開いてく穴を 抱えて歩く
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新緑の風吹く丘に我立ちてじっと手合わすよき月参り
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妻の外出不機嫌になる暇がある古希をするより内緒のビール
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冬物の衣服と布団の片付けで 連休中日の一日が過ぎてく
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じゃがいもに育て育てと追肥して 吾は不調よ熱中症気味
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日曜日 私の休日落ちてない カバンの中も机の中も
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みづとりの 靑葉あをばをぬけて立ちぬれば ひろぐる空に風のかをらむ
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「豪華船一度は乗ってみたいなあ」何気に息子につぶやいてみる
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折にふれ語りかけたき亡き友はライントークの最後尾にをり
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眠れぬ夜逝きし友への懺悔の念病みたる時に会わざりしこと
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ゆく春に 雨の地上ぢのへうるほさば 甘露かんろとなりて百穀ひやくこくをむす
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秋日暮れ吾に届きぬ友ののラインの文字を何度も目で追ふ
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母親の介助のときは足動く 気力の鬼になって向き合う
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眠れぬ夜ふと眠るのが惜しくなる完徹の朝寝落ちして昼
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よくもまあこんなに人がいるよな、ってくらいに人がいる街 東京
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一週間くらいじゃちっとも塞がらないピアスホールじみた喪失
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