朝焼けをワイングラスに注いだら眠くなるまで少し話そう
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段ボール どこの家でも一緒だね「ねこのおきにいり」捨てられなくて
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立春か仕事帰りの冷えた部屋 湯豆腐があたためる爪先
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夢をみる力さえ とうに失いて横たわればただ闇が広がる
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秒針かちかち電球ふつふつ知らない色のペアグラスごとり、
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「垢抜け」「ガクチカ」「骨スト」 あぁ今日も他人ひとの評価で息が苦しい
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お茶こぼす頭ぶつける道まよう世界から「死ね」と声が聞こえる
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おまえほどおれは忠実には待てずこうしてひとり雑踏をゆく
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東京の夜風に乗って夜行バス 降りる頃には名古屋の朝陽
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百円を入れてしまって最後まで話しきろうと話題をつなぐ
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肋骨が隠してくれてた心臓を暴こうとするひどいひとだね
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立春の声を聞いたか枝先に律儀に梅の花のちらほら
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陸奥みちのくのまほろばの里に五千年。続く子孫らのいやさか祈る
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焼き魚、カレー、ラーメン、オムライス 匂い飛び交う団地の夕暮れ
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半額の恵方巻たち食いながら 暦の春を独り寿ぐ
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被災地の空は青さをたたえるか 地球の青の全てを集めよ
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美しき言葉を紡ぐ詠み人よ あなたのように私もなりたい
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ちび怪獣なんて呼んでてごめんなさい 来月あなたは真の少女に
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眼差しを遠くに置いて生きたいと 約束していた去年の日記  
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あの人と同じスカート持っている テレビに呟く湯上がりの時
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四歳が初めて巻いた恵方巻き 花びらにした鮪とサーモン
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花のない冬の間の寂しさに 思い切って買う フリージアの黄  
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手ですくう少しの水もないという 手の生命線少しぼやける
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どうしたら良いか知りつつ訊いている「それでいいよ」が聞きたいだけで
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後輩の悩みは尽きず次々と 伝わってくる心の涙
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軟骨の減りし膝には痛みあり 柚子湯の柚子で優しく触る
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どう生きて行けばいいのかわからない あなたをあいしていない世界で
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寒くって コンビニで買った豚まんが 冷める前には家に着きたい
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灰鼠の雪雲厚くその上で 春はしばらく待機中です
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あしひきの やま照らしたるひさかたの 月かげながむ春たちし
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