西向きの自室に朝は訪れず  昨日と今日が曖昧になる
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見えざる手に引かれた線をなぞるように 俯き歩く会社への途
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あまりにもいいデザインで何もない日だけど着けたどうこのマスク
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来週末 映画の約束 してるから しばらくさよなら ラーメン二郎
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友達といたら笑える ずっと遠くのほしはこわれる
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夢の中にいる女はみんな好みで、みんな恋して、名前だけ知らない
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この期に及んでどれだけ端に立てるかやっている 2秒後
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神様も大きな仕事が好きだからひとまず僕の祈りは無視する
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恋の和歌 朗読する君を見つめた 高校三年 四限の古典
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沈黙の 自習室を出て 息を吸う スーパーさえも 祭のにぎわい
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ツッコミの なんでやねんは こっちでは 軽い気持ちで 言えない言葉
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細雨ささめ の心得ぬ旋律ことばにて ひとりごちたり心ゆかしき
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できたてのビールはうまい ホントかな アサヒ工場は何度か行った
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ことさらに隣の芝生あおく見え 梅雨の晴れ間の日差し憎らし
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健康のためなら死ねると言うけれど 洒落にならない紅麹かな
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貴女とは もう会えないと 思い耽る そんな夏は 嫌いになれぬ
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心地よい“真実”を求め僕たちは人間性を捨てたりもする
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ねこの「はーい」おみみをそっちにむけるのよ めをほそめたり シッポゆれたり
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重力を てんで無視する前髪よ 聖闘士星矢かドラゴンボールか
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ひしひしと別れの予感匂わせる君にこちらからいつかどこかで
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友だちが贈ってくれた文庫本穂村弘の『短歌ください』
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鳴るラジオ聞こえぬ程の雨水升うすいます水噴く程の雨の引きぎわ /雨あし
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空明けて 夏の扉が開いたら 来世のわたしを 覗いてみようか
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雑草の生い茂るみち、こい緑 もう夏みたいな顔しているね
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意味のない言葉を数に当てはめて何かしている風だけ気取る
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声出して泣きたいように思うとき嘘臭すぎて何もできない
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振り回す拳の当たるその先を見ずにヘラヘラ踊った阿呆
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毎日を生まれ死んでと仮定してそれでも今日も食事するのね
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決め顔でわかったような口きいて好きの言葉を使い捨ててく
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ひと通り怖がった後すり寄って その塩らしさ続けば、天使
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