白波にさらわれ遠く流される主なき船に我が身重ねる
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これなしで生きていけるようになったから古本に出す「宮本武蔵」
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小野の山炭焼く煙春来れば今朝は霞にたち交じるらむ
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夜の道呼ばれた気がし振り返る 人影はなく梅が咲いてた
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君の名で いつも始まる ラブレター 終わりはいつも 「愛してる」
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ゆるせない奴は痛くも痒くもない 別に私にゆるされずとも
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真冬日に続く夜には初めての入浴剤をちょっと濃いめに
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積ん読は 電子書籍で悪化する 積んだ事さえ記憶の彼方
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ナナカマドその向こうには大雪山一人に一つふるさとの色
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負けず嫌い 他人ひとに勝たぬと得られない幸せは脆く悲しいものを
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頭痛してまぶたを閉じて脳をみるたまらなきことお掃除したき
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コトリ鳴る鎮座まします仏壇の母のお骨は押し合いへし合い
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踏み歩む ほどに離れた きみの影 振りかえり待ち 手を差し伸ばす
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街角で肩ぶつけてきたおっさんへ 20ハタチの肩はまだまだ強いぞ
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雨上がり 煙る街並み 夕焼けが お疲れ様と 優しく染めて
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チョコレートシロップみたいに人生を舐めてせいぜい火傷してろよ
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異性から好意寄せられていたことこんなに後に気づくなんてね……
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むばたまの緑に亜麻のみぐし変へ鹿島立つ日ぞつひに迫りぬ
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ポコポコと ねこがどつきあう また「ポコ」と 笑っちゃ悪いか ふたりは真剣(笑)
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暖かな雨落ちる通学路みち見下ろせば小さな傘の花いろとりどり
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春一番 冬で受けた 向かい風 代わりに押して 僕の背を
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絡まった文章にこそひとすじの輝く意図が編み込んである
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スーパーで 最後にカゴに入れようと してて忘れた雪見だいふく
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うっすらと 空にも街にもベールして 優しく覆う春霞かな
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昼過ぎの 各停電車に流れゆく 時間ゆったり 降りたくないな
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進歩だが ころころ変わる真実に 何が良いとか何も言えない
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不満ばかり言うんだからと不満言い無限に続く不満の連鎖
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ありふれた 君達だけど この庭に いないと寂しいパンジーの花
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水面から底に佇む藻の日陰 そっと凝らせば雑魚の営み
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この頃は安定剤をよく使う薬が効いたら今が変わるか
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