頸筋に四季折々の掌が重なっており瞑想の夜
3
親が喜ぶから「好き」と食べて見せたホタルイカでえずく晩酌
8
北欧のパン捏ねたる老いた手よ伝統紡ぎし美しき手よ
7
「歪む」って 「不正」って書くね、そういえば  あ、それだけです じゃあまた明日
6
吾子がえがいたデタラメな線にカンディンスキーの息吹宿りて
3
なんでもない夜にあなたとドーナツを食べられる関係になりたいのです
8
記念日に食べるフレンチもいいけれど なんでもない日のミスドも嬉しい
5
今年はもうニットの服は着おさめだ インターホンを春が押してる
12
最高な気分をいつも自分で台無しするのを 20年以上繰り返してる
5
めんどくさい あぁめんどくさい めんどくさい コレがずっと生活を牛耳る
4
へらへらと笑う貴方とその罪は もはや裁けぬ 私以外に
4
春なんて別れるだけで悲しくて出会いなんかは求めないから
13
三月の吹雪に縮むふきのとうゴメン私は春が嫌なの
14
友達から「終活中で」と数枚の布地届きてあれこれ思案
14
ただ空を見上げていたい、言う君に そっとしたる月の目薬
17
ほらここに君のためなら何だってしようと思う男が一人
9
静けさは ぬばたまの夜 薄氷の 撓むが如き 紅をひく月
8
音もなき 今際の淵に しずむなら 聞こえるだろう いつくしむ聲
9
願いかい? 生の期日に 音もなき みずのなかより そらをみること
4
舌先でドロップの文字読みながら君を待ちます 霖雨の間
3
やがて知れ うつろひの世を 行く河に 差す翳は吾 華曇らしむ
4
時給からはみ出す分の頑張りを靴で踏み消す深夜のバイト
9
もし君が また下の名で 僕のこと 呼んでくれたら それだけでいい
7
地下鉄を 彷徨う夜は 何気なく あの子のくれた 一輪が杖
6
市が推しのフレイル予防講習へそれを恐れる歳となりたり
15
いたづらに 苦界な生みそ きみがため 愛別離苦ぞ 已むなけれども
2
わがままを言ってしまって後悔す 「お前は何歳いくつだ」自分を殴る
10
ちま猫が 約10分に一回は 寝室に母を見に来る いじらし(もう寝よか)
10
はらぺこの君にこの指差し出そうお口に合わなかったらごめん
3
ラブレター 夜中に書くと 猛烈に 愛を語れる 朝に赤面
17