「先生もどうかお元気で」添えられた折り鶴が棲む老医師の席
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誰もまだ 何も言っては いないのに 世界に死ねと 言われてる気がする
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誰ひとり欠けることなく成人し笑って話す奇跡と思う
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計算が苦手だった子保育士に堂々として頼もしくあり
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春の夜の一夜限りの再会に我は背筋を少し伸ばして
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冬が好き夏には聞こえないきみのささやきがしろく描き出される
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降り出しも積もり始めも消えたのも朝の天気もこそり巣穴から
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チャンスは貯金できない 掴むのに絶好の日は 今日しかない
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十分な 貯金があるが ちょっと減る 恐怖に駆られ 貯金に励むバカ
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無愛想な 大将がいる 飲食店 味が良ければ 客は満足
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ブータンは世界一幸せな国 インターネットで 不幸になった
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LOOKチョコ大好きだけど168円イチロクパ 1度手に取り棚に戻した
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これは貯金 あなたがいなくなったあと縋って生きるためのぬくもり
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メシ作りダラダラ食って時計見る嗚呼一時間くっちまったぜ
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多分もう会えない人だ 読み終えた童話の中でほほえむように
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マスクして手袋はめて襁褓おしめとるなぜかいいろんますくと言いつ
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春がすみ富士の姿は隠れたり 空樹の塔も薄くおぼろに
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生きるのに要るモノなどのチラシ見てなんか卒業した気がしたり
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足元を 雪にとられても この桜 咲いてみせると 花芽膨らむ
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ポワントでたちしあなたの視線へとまぎれてさりげなく僕ですよ
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凍て返る 弥生の雪に 耐えながら咲く 河津桜よ ありがとう
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ひとしずく 昨日の雨の なごり落ち 今日という日を 踏み出す一歩
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昨晩の 雨のなごりの 水たまり 足元の空を ひょいっと越えて
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かかからと聞き慣れぬ音響き来てあれは啄木鳥きつつきつつく仕事
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予想気温と「非常に多い」花粉予報 ため息ついて コートを悩む
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ちゅーるさん 薬を2錠混ぜまして 1錠残され 一勝一敗
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まくらのよこ うでのなかにて ねむるとき ねこのさいこう・あいしんらい信頼
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かの年二〇一一は草も知りてかねば 土押す若芽みつけホッとす
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薄紅の 空明けゆきて 日の昇る 海の向こうへ きみは飛び立つ
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真剣に謝っている顔じゃないそう言われても元がこれだし
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