机上には、昨夜の雫が 寝転んでいる。 そこは私が 予約してた席…。
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とりあえず太極拳で元気なる 母は八十七で団地で一人
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母の遺体ホルマリンの風呂に浮く 見たくないぞ見たくないぞ
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着飾るは、自虐が伴う。それがピアス。 みぞれ取り出し、暫し慰む。
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目に映るあらゆることが針となり全身を刺され眠るしかない
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何も無い誰もいなくていいじゃないかつて例なき 生築くのよ
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泣きながらみそ汁作ったから偉い おまえは絶対ゆるしてやらない
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こっそりと公衆電話で待ち合わせ約束をした初恋記念日
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お化粧にもはや興味はないけれど麻呂眉だけは避けねばならぬ
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ちょう字路をTティー字路といい、Xエックスをツイッターという そういう人間
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『下手な嘘は聞きたくないやさしい嘘はもっと嫌』と泣く嘘つき
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天仰ぎ矢印睨む帰路の果て きみは雨をねずみいろで塗る
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金色こんじきの大き葉揺らしプラタナス 青空そらの高みに届けとばかり
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背伸びして七味を振った牛丼を辛味に耐えつつ涙目で食う
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知ってるよ わたしはわたし 波の音に 削れて溶けて 海になっても
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こんなにも 大人になっても 抱き締めて 頭なでなで されたいのです
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病室の窓から見える公園に今日もピンクのボールが跳ねる
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朝食のパンを焼きつつ元日の晴れ渡る空私はひとり
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焼きたてのパンも良いけど炊きたてのご飯も良いね ハレの日の朝に
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文化の日 板切り抜いて ヤスリがけ 風は吹けども 汗が流れる
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チビ猫の おひげの先に枝毛ある チョッキンするかい かわいいからいっか
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イソフラボン 今日は冷えたる豆乳で 日が暮れてから あったかお茶など
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晩秋にそろそろ振られ旅支度 風の吹くまま寅やを後に
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生産性の呪いにかかった僕たちは犬と成り果てて夜毎、牙を研ぐ
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昔から知ってはいたがお尻に火付くまで何もやらぬな君は
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美術館の無料開放に喜ぶ、子供に連れられた親たち
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改札を越えた2人は眠らない。東京は多分、いま午前2時
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カーテンを閉めるたび街に響く風鈴の執念 もうすぐ冬
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終末はあっという間でほんのりとカモミールの香りがしたんだ
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物欲が止まらなくなる三連休いいってことよ自分にご褒美
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