百億の眼がともに見る夢ならばほぼもう現実のようなもの
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燃ゆ躑躅 一輪手折る 吸いあげた 火傷しそうなほどの蜜
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温もりの仮定法で雨宿り かじかむ手の甲消えゆく足先
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本日の死因予定をつみとった名前の毒でくすりと知らず
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いやなこと束ねて茹でたパスタでも下手くそって君は笑った
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観光バスでほろ酔い 御祈り帳に書いている 「空海の風景」
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「歌なんか 歌わなくてもいいんだ」 と 言ってやれたら どんなにいいか
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点であることの宿命 消滅も遍在もすることができない
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今日もまた「おやすみなさい」君にゆふ遺された明日も明後日も
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人変わり 代わりの人は 多けれど 君を忘れず さよならと言う
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夕日差し 君の髪まで 黄金色 さよならを言う 時すらなくて
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金持ちは この世を愛し 幸せに 暮らして老いる ああ君もまた
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若者よ 無駄に時間を 費やすな 老いて後悔 することなかれ
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棺桶に 片足入れて なおさらに 未練がましい 老人の恋
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悍ましき 心に人は 退きて 呆れ果てたる 老人の恋
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答えなし 円周率に 終わりなし 実ることなし 老人の恋
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壊れたか 人の心の 凄まじさ 理不尽にして 老人の恋
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慕い寄る 麗しさなく ぼんやりと 夕焼け眺め 老人の恋
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現実を 思い知らされ 絶句する 老いた姿を 誰も好まず
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寝る前に日向を歩くと見る夢を覆うようにシャッター閉めた
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夏風を 切り裂く君の 後ろ髪 染まらないでよ このままずっと
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泣きながら玉ねぎ刻む 生活と両立可能な悲しみもある
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がんばって外れてみたら無視された散布図内の点の瞬き
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あなただけ 赤色灯の灯台へ続く波止場をゆっくり渡る
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われわれは風に傾く草木です 私はひとりホームへ降りる
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土曜日の昼から開ける発泡酒みたいな君を愛せるのなら
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「好き」の温度調節さえ困難で 笑って誤魔化す君も私も
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抱えて眠るのはぬいぐるみでなく 私の中の幼い私
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藍色と灰色に溶け込んでゆく街の焦りを見逃すばかり
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街路樹が歩道に落とす影ばかり目で追っている五月の真夏日
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