あの瞬間 キュッと縮んだ心臓の ままでちいさく、生きていくんだ
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冷房のボタンのゆるい反発が夏を殺した指先の罪
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あの日より前には厭わしくさえあったようなことに笑みイイね押す
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眠剤を忘れた夜におとずれる死ぬほどこわいほんとうの須臾しゅゆ
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こんなにも遠くまで来てしまったと彼の香りが薄れて気付く
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乗り換えの数百人の右隣り 毎日通過す境界線
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石を積む崩れてまた積む新記録すかさず風吹き音立てて崩れ
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夜が更けてじわじわ酔いも醒めてきてサア自らを見つめるときだ
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今日も二時街火は消えて我一人 静かな星に怒られて寝る
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さぁやるかいやまだ朝だし昼間だし 夕飯食べなきゃああ明日かな
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半端って云われる三つ葉の傘さしてびしょ濡れを演じているの
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薄雲に糊付けされたか気のせいか めくれば朝が見えそうな月
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仕事人 毎日起きて はい偉い 今日も一日 勤労感謝
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一人酒 ライン開いて 過去思う もう君にだけは 電話しないんだから
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いつからか自分の力で漕ぎ出した 大海原の波よ静かに
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コンセント抜いたかどうか気になって間に合え私駆け抜けた朝
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街角の 材木置場も ドームでも『歌う』ってことに かわりはないさ
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「この歌は みんなのため」と 嘘ついた。ほんとはたった、ひとりのための、
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青空が高く眩く見えたから 終末時計の針を進めよう
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夏空に 飛行機雲の 一直線 同じおんなじようには 届かぬ気持ち
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たぶん今日星がきれいだしこれから海まで走る帰りは知らん
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ここにいるよ 曼珠沙華の雄蕊に立つててもまだ攫つてくれない
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死にたいと思う気持ちは嘘じゃない バースデーケーキ頬張りながら
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清涼な涙が宿るコロナ禍にそえる一滴 君の息吹が
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声変わりする瞬間の接吻は凛々しいような哀しいような
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伸びきつた年越蕎麦を啜りつつ走馬灯ばかり駆けさせてゆく
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星醒める間は私の側にいて星の眠りは二人の別離
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後の世に生まれる子らにはまっとうな世界を与えたいと思えり
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夏野なつの牡鹿をじかつのつかやすまず世人よひと思兼神おもひかねのかみ
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触れぬ間に大きくなった君の顔 でも耳たぶには産毛が残る
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