ともすれば世界の印刷ミスであるあまりに電灯だらけの夜景
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猫がいた 写真を撮った 不特定多数に見せるつもりで撮った
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サボテンに水をかければにんげんになればよかった冬せまりくる
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「『死ねよ』」とか、そんな陳腐な一言で、人は死ぬよ」 と、言っていた遺体キミ
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走り去る 電車の音を知らないで 生きていたかと今更に知る 
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僕たちは天使のあの子の目が四肢が光を集めるさまを見るだけ
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叶わない 敵わないとは知っていて 膝をついてもペンは置かない
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深淵を覗き込むより地獄より 恐ろしいのは貴方の笑顔
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誤って生まれてしまった家ひとつ葬るための虹をかけよう
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君からの、たった一言の「すごいね」で、何百回でも頑張れる。
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秋深し蔦のバス停時刻表旧尋常小学校前
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なくしもの 定期に有線 思い出の店を有毛細胞にかちこむ
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僕などを追い越してゆく歌たちが 先にあなたに会いにゆくでしょう
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おそらくは辿り着けずに沈むだろう それでも僕は流し続ける
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窓の外 時雨に打たれ 響くのは 唐紅の ブルーベリーの葉
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逢いたいと思っていたのが懐かしい 記憶の中のあなたに微笑む
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朝七時 瞼の上にキラキラ乗せる 今日も私は「女」になる
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今はもう 夢の中でしか聴こえない 貴女の声に耳傾ける
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絶望が愛と呼ばれた慣習に倣う気はない それだけである
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雨垂れがキン・コン・カンと打ち鳴らす観音びらきのおれの肋骨
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甘酸っぱい 紅色の林檎とカスタード 「恋」という名の アップルパイ
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おやすみを、洒落にならないおやすみを、言ってあなたのいる合歓の木に
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達郎が聖夜歌ったあのころはスマホはなくてシンデレラがいた
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蜻蛉がとんでもひらく自動ドアこの魂にちょうどいんだわ
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窪たまり 刈り根かき分け伸る葉が やわらかき日を浴びているかも
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氷雨降る。散る葉眺めつ公園の、梢につよし 浜朴の葉は
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この傷にキスをください愛される理由になれば救われるから
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「生まれたくなかった」は「生まないでほしかった」とはやや違うはずだが
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家 帰宅。 脱ぎっぱなしの靴下に 僕を重ねて じっと見つめる
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しあわせな結婚式を見た夜にバウムクーヘンひとりでかじる
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