決断を迫られる窓には百合が一輪外を向いている
2
パン咥え家出る娘、父案ず曲がり角での出会いなきよう
5
「ちょっと君、お茶奢るから時間ある?」真夏の交差人波を裂く
1
「神はどこ?」と少女の声燃える街煤色の空照らす三日月
3
白い布被って夜に誓います あなたのふこう たまにしあわせ
0
軽率な九月をうたう夜が来て静寂のなか鈴を埋めるよ
5
嫌悪しているところへと回帰する世界の不思議に怖気おぞけを感ず
2
もろびとは摘んだその日を取り落とし無謬の瑕疵をさえずっている
4
きみどりの葉つぱはハートのかたちにてふはりと軽くかはりゆく今日
4
あたらしき息をかへしてつながりぬハートの葉つぱと以心伝心
2
人びとのお喋りを聴く一角に背のびしてゐる観葉植物
2
うすき影なれどもあかるきかたちなる葉つぱは無言に語りつづけむ
3
離せないスマホあるから話さない 寝起きも昼も夜寝る前も
3
甥ふたり嵐のごとくやってきて祖父母な親はくたびれ果てぬ
3
暗がりでゆるりゆるりと繋がって 生暖かい夢を見るだけ
1
寂しくない別れだったのに 新快速 いた席見て涙を流す
1
あんまりさ 難しいこと考えず 浮かんだことを詠んだらいいよ
6
「5」・・・・・ 一人いなくなって初めて 綺麗に切り分けられるケーキよ
0
憎しみを溜めたあたしの毒袋、焼き場の窯を汚して燃える。
0
たまさかにあくがれ出づる寂しさもふはふはとして空即是色
3
官能も禍福も恋もあわせ呑み偏西風と東に消える
7
畜生の如く素直に拗ねるとて三十路の夜には可愛げもなし
0
身の内を図像化しせる短歌にて頭の中の曼荼羅みせる
1
草をはむうさぎの口のせわしさに生きることの大変さを知る
2
揉み込んだボディスクラブ山猫軒知らぬふりして喰われようとも
0
卓上に秋とふ色と姿にて置かれてゐたる富有柿二つ
3
羊雲よきことのある兆しとふよきことなくともそのままにあれ
5
越ゆること後回しにする日常性この壁の高さ見上ぐるばかり
3
誕生日プレゼントには何がいい?ではマフラーを編みましょうかね
1
種蒔けど芽吹くことなく我出でり 十万億土に花咲かす旅
1