雨あがりの小春日和に惑ひしか雪囲いのなかで蝋梅一輪
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兼好の沓冠くつかむり歌に「よねはなし」「ぜにすこし」とふ頓阿の返し
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「風邪を引く」「コロナに罹る」と言ふなれどいづれも敵はウィルスならむ
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どうしても君に会えない鬱の日は ダリの時計の如く垂れゆく
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「過去に戻れるならいつに戻りたい?」「地獄に戻りたい人いるの?」
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舞台の上で君とワルツを踊ろう 化け物みたいだと笑われても
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今日の日を塗り替えていく微笑みも君にとってはいつもの笑みだ
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使って良かったもののうち 教えたいものも教えたくないものも
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買ったばかりのものがセールに それって見る目あるよね、ある意味
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きいんと冷えた月光の下に 丸くなる君の体温だけがあった
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彫刻みたいな君の背中の凹みで足湯をしたい冬
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不安をね 一つ、一つ、と 積み上げて ハシゴをかけて 星を盗むの
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幸福は現実/期待であり、分子を固定するなら、つまり
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カーテンを引けば見えなくなるものがあるという目の前の現実
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君のこと想って独り泣くために 優しい歌を一首ください
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ロールケーキ「いちご大きい方、あげる」そういう母の気性を継いでる
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しは大変だね だって死も詩も幸も傘の持ち手にひっかかってる
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漏れ出した愛の形は数あれど未だ渡せずしまい込む日々
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秋の末 寒いはずだと取り出した 湯たんぽ君は未だ空っぽ
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何も無いその幸せを悟る時与える愛が勝つのであろう
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中二病患う僕の青春は痛み伴う発言の日々
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猫さんに使ってもらう湯たんぽを三つつくって炬燵に入れる
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青白い頬にそっと手を添えては君の温もり感じるために
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君のつく 優しい嘘の 行先は お月様だけ 知っているでしょう
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汚いとどれだけ肌を嘆こうと太陽は黒を愛している
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羽織たる母の遺した鮫小紋断捨離ならず再び納む
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マイナスにプラスをかけてもマイナスだ不快と愉快で不愉快になる
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ママチャリが落としたネギを拾い上げ「落ちましたよ~」と走ったあの日
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炊きあがる新嘗祭の朝の飯納豆・佃煮・漬け物・イクラ
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散る羽毛破れたダウン後光差す 飛び降りるきみ天使のように
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