汗ばんだ2人のことを知る者は私とあなた 扇風機だけ
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何もかも失ったのにこれだけは失敗しないタルト・タタン
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サンジャック通りこゆればふかき闇みるべきほどのものはみたりき
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大丈夫、まだきっとわたしここにいて湯船の中で形を保てる
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満たされた行方の知れぬ喜びをただただ一人で噛み締めては泣く
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制服に未練があると君は言う 夕日の部屋は学校で無い
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割れた爪見ながら零す「どうしたの」私の痛みをあなたは知らず
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おじいちゃん水泳選手をあきらめて 私は駅のタイルになりました
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3月の2度目の火曜日 本日のログインボーナスは親父の抜け殻
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自己嫌悪だけが起きている午前四時 口裂け女の寝息うらやむ
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好きだったあなたのうなじを思うとき自分の人生がどこまでも止まっている気がする
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ひとりなら平気な虫や雷をこわがる君がとても可愛い
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勢いで買ったギターを立てかける君といたあの夏の標本
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台風の目につつまれた戦場が無風の中で色を喪う
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‪誰でもいい、けれど私はダメなのね。自分嫌いはあなたのせいね‬
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‪しがらみのなさの嬉しき明日から異動があれどどこでも行ける‬
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才能かそうでないかもわからずにもてあましてる二十一歳
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戦争のあった元号考える明治昭和も三文字である
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新元号令和となればどこか不安三文字だからなのかもしれず
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「珈琲と煙草優しきマスターが言うとても相性がいいのですけど禁煙なのです」
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オリンピック近づくごとに着々と禁煙となり喫茶店らは
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セーラーの女子高生は自らの価値を知らない知ってはならない
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隅っこで暮らせるものなら暮らしたいくまねこかえるすみっこぐらし
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一年中真っ白でいる吾の腕をけっきょく灼かない君なりの夏
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季節ごと変える雷雨が過ぎ去ればあなたにみせたい栗色ニット
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さめやらぬ夢のほとりにおく露のかわくまもなくものおもふころ
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‪あれが今あったらいいと思う日のために捨てられない女です‬
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‪この愛は本物だけど区切られた時間の檻が隔ててしまう‬
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自らが規格外だと嘆く時ビー玉ガラス散らばし遊べ
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何ひとつ間違いのないこの海に嘘をまぜたら灰色になる
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