老いてみる背中の辺りほととぎす桜の並木に貴方を想ふ
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この恋が密やかにただ密やかに続けと願う私とあなた
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十五回目の夏が過ぎ次の夏精一杯に生きてるだろうか
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切りすぎた爪の行方を探してる 空虚に浮かぶあなた三日月
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会えない日指折り数えて溜め息を 今夜もホットミルクが苦い
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秋袷洋服店に入り込み半袖Yシャツ探す不思議さ
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こいのうた好きだったんだ十年前 いまでは我が子が一番なのです
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酔いどれできみへの思いたどりつつゼロとの変化におどろく二日め
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あの枯葉それから一歩踏みしめてここでクシャッと心地よい音
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「イエティが捕まらないのはなぜだろう?」「そりゃあもちろん捕まってるから」
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立ち上る虹色の滝がよく見えて、しかも7色ですごく映えた
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爪を切り幼くなった指先で 起こすプルタブ麦酒は苦い
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私、まだ、言葉遣いが下手だから、ちょっとごめんね、抱きしめさせて
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君の苦しみを分かった気になって泣きそうになるのをやめたくて
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もう残り二ミリのリップクリームで 過ぎた月日をうるおしてきた
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丁寧に爪をみがいてからなぞる彼の背中のあかい五線譜
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なめらかだ 最後に泣いた日のことを思い出せない程の人生
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今日の知見:ごま油越しの世界はさよならに似た深い紅色
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ラストワン これで最後と 言い聞かせ 気付けば広がる お菓子の個包装ふくろ
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死んでゆく 君の心に 花 手向け どうせ世界は 灰色なのだし
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秋の月その有様に奪われて 寂しさがそっと上に来て乗る
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「暁の、海老名サービスエリア LOVE」クラゲに彫られた刺青タトゥーに見惚れ
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寝る前にブレックファーストブレンドの紅茶をいれる程度の悪女
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白鳥がシベリア突っ切り来る時期か 空は水色 川は空色
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新酒飲み父と母とがニコニコと鯛の土産を皆で分け合う
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「生きてさえいればいいことあるから」と 唱えて 独り 眠りつく夜
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愛の名を借りて貴方に伝えます 「冷えないように腹巻をして」
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暖かいご飯とお風呂とお布団と、それだけは満たされていてくれ
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体裁を捨てると決めたそんな日の練り物だけのコンビニおでん
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十年の昔に乗った或る遊具 息子の靴はまだ小さくて
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