ゆるやかに光の中を舞うちりの名もない宇宙の朗らかなこと
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ドライアイス抱く母に添い寝してみる冷たさで分かる死んでしまった
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死ぬよりも生き損ねることのおそろしさに気付いてとうに成人
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降るのなら言葉の雨にうたれたい 私は本に閉じ込められた
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悪い気を払う音を聞かされ気分が悪くなったので きっと私は悪い方
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いつの日かに買い込んだ掃除道具にカビが生えてた
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炬燵布団に開いた歯型にもういない犬の姿を見る
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既読にもならぬふきだし眺めつつ終わりはいつも夢に似ている
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胎児へと還すみたいに猫を抱く足りないものを補うように
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おはようを淡く重ねて輪郭をつくる君との絵はまだ素描
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さみしさは机の上で首かしげ僕が気づくの じっと待ってる
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妄想とほんのちょっぴりの後悔と朝日を浴びながら不整脈
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ネコちゃんの耳ない、ないと泣きながらもうひとくちを強請る純真
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土曜日のさみしい夜のツイッターいいねの数はため息の数
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朝八時ジャスコの前を通るたび十四の私がアクセルを踏む
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新聞の憂い哀しみ夕べにはていねいに折り畳んでかたす
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ウイルスになりたい。「どこで聞いたのかわからないけど知ってる」歌に。
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天井に張り付くあかりに吸い込まれ震えて過ごす静かな夜よ
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「ヒト科 よくわからない」と図鑑に書いてある中学生という生き物
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あの頃に戻ったとしても 同じ道辿るのだろうか あの分岐点わかれみち
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菅公の社に仕へし三十余年みそとせあまり 少し誇らしき生かされし日々
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満開は想像の倍短くて 命は桜に例えられない
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インドカレー屋の読めない店名よ 夕日は今も揺らぐだろうか
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空と海 空と山との 境目の うつけたグレーの 彼方に行きたい
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ひさびさにきみを抱いだけばその頬からわずかに街の残り香がたつ
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突然に 飲みたくなるの わかるでしょ 私は今よ オレンジジュース
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門だけになった木造アパートに供えられてるコーヒーの缶
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確実に ただ一つだけ 言えることは 誰も幸せに 出来なかった
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君という 心の病を 患って 後遺症に 悩まされてる
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人間は番いを好むのか否か見れば見るほどよくわからない
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