ワイシャツの 裏返し袖 引っ張って しばし酔うかな 君の香りに
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一言も 言い返すこと なくなって 漂うにように 生きている我
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逝き人が 望めし檸檬の ひとかけら 口に含みて 愛おしむ日
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病室の 白い壁の 向こう側 透けて逝って しまいそうな君
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集めたの一年分の満月を でも名月には勝てなかった
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二ヶ月後死ぬと残した横顔も 別に尊くなんかないのに
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この世をば 染めたる色は 幻と 知りても染むる 彩の儚さ
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土曜日に アイロンかける 日課増え ビジネスマンの はしくれとなり
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試みに 我がたましいの 叫び声 三十一文字に 刻んでみたい
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ちちはは父母と墓参りした秋分は一年前かおはぎ食べ思う
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持っていきそびれたもなかがひと月の湿気の分だけ棚を圧す秋
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まだ少しひんやり乾く部屋の中 秋というものを待ち続けている
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将来は農業をして生きたいと新幹線から思う、思うだけ
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差し出した この手は届かなくていい これが最後で、かまわないから
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運命と知らないままで取った手の生命線をかさねて走れ
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致死量の ひかりを浴びた夕暮れと わたしはきっと、戻ってこれない
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ほらご覧 君たちを焼き尽くすため ここより生まれた業火伯爵
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呪われた茨が次第にからみつき この恋がいずれ わたしを殺す
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一匹でないてる蟬と六畳の一間ひとまつがいになれないわたし
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爪先を隠して寝たい掴まれてしまった日には遅いのだから
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握る手は運命線に接してるスマホの中の消せないLINE
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ねぇねぇ、と君が呼ぶ声甘くって 君の抗体獲得できない
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水溜まり信号の赤反射する 君が来ないと息が痛いよ
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仰ぎ見ればいとも容易たやすく広がる光 閉じていたのは私だったか
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意味なんて なくてもいいの いくらでも 付け加えたきゃ どうぞお好きに
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なりたいな 理想の大人 どこへやら ごまかすことだけ 上手になったよ
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恨みます そんな言葉で 済むものか 地獄に落ちろと 睨む他なし
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君の目が瞬きをする瞬間に生きてると思う新鮮なほど
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バランスを とるのはとても むづかしい 心の声と 吐き出す言葉
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種をまく あなたがまいた その種は 良くも悪くも 芽をだし育つ
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