僕などを追い越してゆく歌たちが 先にあなたに会いにゆくでしょう
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おそらくは辿り着けずに沈むだろう それでも僕は流し続ける
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窓の外 時雨に打たれ 響くのは 唐紅の ブルーベリーの葉
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逢いたいと思っていたのが懐かしい 記憶の中のあなたに微笑む
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朝七時 瞼の上にキラキラ乗せる 今日も私は「女」になる
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今はもう 夢の中でしか聴こえない 貴女の声に耳傾ける
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絶望が愛と呼ばれた慣習に倣う気はない それだけである
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雨垂れがキン・コン・カンと打ち鳴らす観音びらきのおれの肋骨
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甘酸っぱい 紅色の林檎とカスタード 「恋」という名の アップルパイ
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おやすみを、洒落にならないおやすみを、言ってあなたのいる合歓の木に
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達郎が聖夜歌ったあのころはスマホはなくてシンデレラがいた
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蜻蛉がとんでもひらく自動ドアこの魂にちょうどいんだわ
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窪たまり 刈り根かき分け伸る葉が やわらかき日を浴びているかも
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氷雨降る。散る葉眺めつ公園の、梢につよし 浜朴の葉は
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八時間睡眠のこの万能感 口に出してみる「光あれ」
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今までのまばたき全て回収しその空白を君で埋めたい
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この傷にキスをください愛される理由になれば救われるから
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「生まれたくなかった」は「生まないでほしかった」とはやや違うはずだが
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家 帰宅。 脱ぎっぱなしの靴下に 僕を重ねて じっと見つめる
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しあわせな結婚式を見た夜にバウムクーヘンひとりでかじる
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セレナーデ秋の夜長に涙する光り輝く指揮を求めて
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ほの暗い部屋から出られぬあの人は今日も私に花泥棒させ
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「せんせい」と男の声を混ぜる彼が、生徒でなくとも俺は先生
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雛の頃つむじを見下ろしたるこれが巣立つ時には仰ぎ見る彼
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置き去りの机の横の椅子 いつも忘れられるのは俺の方だ
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やっぱりね待っても来ないキシリッシュとっくに味が抜けてしまったわ
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明日から一気に冷えるらしいけどフライングして今夜から鍋
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たっぷりのウールの壁におおわれた首のうぶ毛をさわさわなぞる
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枕詞だけが息づく界隈に鮮やかすぎる言葉の人よ
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マジパンとクリームの味がしてそうなサンタ服着た君のデコルテ
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