美美庵
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最近、ある方の影響で、三十数年ぶりに、
詠みはじめてみました。
拙く、荒削りなものばかりですが、
一日一首を目標に頑張ってみます。
よろしくお願いいたします。

ドアひとつこちらと向こう断ぜられきみがぼくでなかった強み
11
配信の動画で切に何か言うきみを騒音掻き消し断ず
8
見も知らぬ座敷で巨躯の蛾を始末している私夢そこで切れ
11
何人なにびとの思惑からもこぼれ落ち食器と食器かち合う音で
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末の子が泣き止むまでを待ちおりてママらと囲むランチの時間
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追々と荒振る冬の物語英気養うチャイミルクティー
14
肉親の死を味わえば何かが堕ちる人間ひとさがから在るべきものが
10
催事ありサンタ帽子がずらりと並び人の世は経過してゆく
11
聖域よ引きこもりなる世俗語に騙されないで神の子BOY
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純粋がたおれゆくから土曜日に撫でくる風が爽美そうびなように
12
消灯の早い病棟ここまでも運ぶ浮き世のクリスマスイブ
21
薬など無しにカフェーに座ってた7年前に戻るは難し
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照れ混じり自転車起こし立ち上がる少女に男言葉足らずに
18
匆々そうそうとぼくには最早二つだけまだ来ない死とまだ見ない神
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雲空も太陽さえもぼくの死は意に関せず何事でも無し
10
地下鉄のドアーが閉まる静けさでぼくたち他者が共に運ばれ
14
この世界こうしたものが跳梁ちょうりょうし神が伏し目で憫笑びんしょうする日
11
コホコホと咳込み歩行おぼつかずこうして人は坂下るのね
18
しもかただけが目にるたそがれの蛇の目傘手に門に立つひと
15
明日もし横死遂げても床しげにこの世のぼくはただの客人
10
プレゼント漂流しつつ流れ着く私はそれを開けないけれど
16
それなりに歳とったはずの不思議ありぼくが聴いてるチェット・ベイカー
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物語続きはいつも些事雑事そんなページっていくだけ
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白々ときみの魚が正視させぼくをきよめるフランス組曲
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もうとうにぼくのリズムをずれているブルグミュラーのメトロノームよ
10
二十時の危険な無事の過ぎるときぼくの鼓動はより速まって
9
きみがいてある日卒然消えたのが鮮々と凪ぐ海でよかった
10
人生の通行禁止前にしてぼくは百年取り澄ましてる
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一生にあまた見てきた諸々の死の相なべてぼくの死だった
10
さあお逃げぼくの指先逃がし翔ぶ蝶だけ捕獲してるんだよ
8