美美庵
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最近、ある方の影響で、三十数年ぶりに、
詠みはじめてみました。
拙く、荒削りなものばかりですが、
一日一首を目標に頑張ってみます。
よろしくお願いいたします。

言葉にはならぬものしか私には手のひら零る悲の粒子たち
9
呼び声と抱擁があり放さない鍵を確かめ今一度だけ
9
枯れそうな一輪の君私など意にも介さず落日見遣る
9
ミスト浴び高架歩廊を歩く夏束の間私で居れる場へと
11
感動を不承不承に手放して夢に泳いだ遙けき盛夏
10
つくづくに世の楽しみごとの感興が失せて久しきわが身浮き立つ
14
迷宮の夏の不穏のなかなれど驚くほどに事は単純
13
タワマンの踊り場座り眺めおる生の蝟集の焼け付く夏に
11
輝きて浮上昂揚したる日も確かにありて夏の陽炎
13
迷界の迷子さながら茫洋といずれ旅立つ冥界の淵
12
勘違いしてない生がここにありにわかに増えてうごめく蟻よ
17
無起であるそれが私に課せられた美しからぬ原罪である
10
だけれども自由があなたいつの日も一体となり寄り添っていた
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探してた琴線触れる言葉をと四年が経ちて太陽のもと
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駄目だった人生などは有りもせず大河の流れ悠久にゆく
17
永遠の輪廻往き来の並木道稀有の孤狼の何者と言う
16
空白の手帳見ながらまだ私生きてるつもり笑止と言って
16
夕刻の忙しき人の往来をただ眺めいて父よ母よと
14
炎天下剪定の音聴こえきて私の業も刈り整えて
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片手撫でこの指先で数え得る残余の生を思う濡れ葉に
15
神でさえ術なき宵の蕭条の暮れゆき人の散り散りと消ゆ
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遥かへと伸びゆく木々の遊歩道死を思い居て申し分なし
10
白樫しらかし高木こうぼくもと慎ましく役割り終える皐月さつきの子たち
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窓外を眺む私を瞬殺で撮りしあなたの想い出湧きて
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散り落ちて忘れ去られるそれ故にみやびな高貴宿す桜よ
14
虚実あり幻と見る営みに今日分かれゆく死者と生者に
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傷心も気丈に受けて可憐なる杵築のさいのきみ遥かなり
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機械音不気味に響きつながれた看護師さんの手慈母の安心
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一匙ひとさじのココアクリームすくい上げ死と同じほど生は空無だ
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灰色の景色はすべて後方へ記憶ばかりが心かすめて
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