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感覚・空想・生活

その像の瞳は既に喪はれ豊かな森に背を向けてゐる
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百億の花粉を載せて春風は鼻腔の奥に受精を目指す
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草花の舞台としてのうつわには咲かない花が落ち着いている
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幾千の衝突を経て肉体は神へ捧げる一瞬を知る
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ビデオにも戦争がありいくつかの戦後をくぐるこの部屋がある
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懇情のこごった杯に浮き上がるはかない花をゆっくりと吹く
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そのせなにちいさな羽のあることを知らない君はあの町を出ない
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耳塚のように建てるか記念碑を恋人らから奪った釦
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ぼってりとした膨らみを幾年か育てているがまだ生まれない
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畳まれたまま開かれぬ手紙には始まりのない物語たち
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米の死体+魚の死体 結ばれたふたりは幾度世界をめぐる
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猛烈に長いワンライナーを書く途中入社の強気な彼女
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ももづたふ翡翠のはしを八十ばかり連ねたかずら今ぞ盛りは
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annualな喜びだけが幾たびの世紀を越えてこの場所に咲く
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鉄骨のジャングルを縫い白黒の検非違使は追う咎人のかげ
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無自覚に収奪されたものたちをこの手にもどす為の強盗
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凍てついた組織にそっと潜らせてわずかな刻を確かめる刃
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あの日へのワームホールの入り口は公園の隅、銅像のうら
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八年後グラミーを獲るきみがこの場所から放つはじまりのうた
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その猫はミス・リバティと戯れている海軍が着くまで持てよ
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新刊の出ない隣のブースから伸びた行列ばかりが見える
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MCを火工パイロが照らし伝説の四人が集う舞台を嘉す
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今生を辞してあちらの歌会に持ち込むための詠草を編む
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すりきれたのんどがはなつうたごえがどこかに春を呼び寄せている
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首輪ではあまりに犬でごまかしに左手首に輪をつけている
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年度明けくらいはすこし豪勢な弁当にして立ち向かう春
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このよ彁うな機械の中彁の幽霊もエクリチュー彁ルの歴史のひ彁とつ
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いくつかの聲を盗んで貪婪に視線を喰らいゾンビはあるく
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指などは簡単に飛ぶこの羽を前に嘘など吐かないでよね
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舶来の狼桃がイタリアを真っ赤に染めたあとのひとさら
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