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感覚・空想・生活

ちゅら海の中核にある中宮に仲夏をひらく昼光の射す
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融け落ちる瀝青のうへ黒揚羽舞ふ雑踏のいづくにか花
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遠花火多くのifを織り込んでこの眼にうつる鮮やかさのみ
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夏も暮れまだ飛び立たぬ雛燕ぼくらは時季をのがしつづける
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夏の日の物陰強くきわだちて街は神秘と憂鬱のなか
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ささやかな神殿となるキッチンで母はひとりの神職となる
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みんな死ぬ死ぬがせいぜいとりどりの死まで生きよと願う教室
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母と子をかかえ一つの要塞のごとく電動自転車駆ける
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弧を描く白球放つ若虎よ向こうの空に球宴はある
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ぼくという連続性をヒュプノスが断ち切るところ見れぬまま朝
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限りなく透明になり体温と交換させるポカリスエット
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茶の湯炭に着想を得て着火した薄墨チャコールの浮く白磁チャイナのうつわ
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ヴラドツェペシュの末裔はこんなにも月を緋色に染めただろうか
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ユニークな裂帛をする先輩にいちども勝てぬまま受験生
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AIを介さなくても外つ国の少女が放つ怒りはわかる
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バーニアは砕けもはやエーテルもぼくらの声を媒介しない
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水盤にわたしの息はしみ通りわたしだけ知る模様をつくる
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舌さきが半歩進んで歯の裏で調音されるきみのイニシャル
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猛暑日を超えて酷暑日あたりからひとのこころの折れる音する
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文明の充ちる銀河も端々に未踏の星はまだあるだろう
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雑踏に逆行してはひとりきりあづまの空はうるさくせまい
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夏が来る意味だったけどチョコミントあなたが嫌いだったら嫌い
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消えものと残りものとを思案して反映させるあなたとの距離
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見てないで言葉をつがえ遠ざかる闇夜の月を撃ち抜いてゆけ
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母と子の嵐の後に残されたトマトがひとつ佇んでいる
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階梯をいくつ降りればきみのいる次元の海に行き着くだろう
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煮えたぎる赤色きみが美味そうにすすり横目にぼくは甘口
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投げやりに返す返事をあとなんど聞けるだろうか君との暮らし
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水面を裂いたバサロの水しぶき遠くに聞こゆ16の夏
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実家から千キロさきのからっぽの部屋からぼくの生は始まる
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