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感覚・空想・生活

きみはまだ起きてはこない一杯の冷却水を飲み下す朝
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虚構げんじつはこのなかにある不凍液に深く沈んだサーバのなかに
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かじかんだ指先きみに触れてからその温もりを奪えずにいる
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わたしにはわからないうたあのひとがよんでいるならそれだけでいい
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公開鍵手渡してから幾年も待っているわたしだけの暗号
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素手喧嘩ステゴロでアイツの鼻をへし折れば付き合ったことチャラにでけへん?
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幾年を耐へてれ屋の中庭に主を持たぬ柘榴の実る
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恋情の最大瞬間風速になぎ倒される君の中心
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背表紙をなぞる手つきでわたくしのせなもひっそり触ってほしい
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はてしなく分岐はつづきそのなかのひとつの線をぼくらは歩む
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まっくろな海へと僕ら走り出しあの夜だけの星座になった
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みやこ路のアーバンネットワークでも「汽車が来るよ」と道産子のきみ
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渇望が無数の蛇の絡み合う都市の奥から滲み出す夜
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二車線の左がやけに埋まりだしこの道行きは右折だと知る
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にらめっこつられて笑うきみとぼく地球照は夜空にうかぶ
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単一のuni-かたちformを帯びた鋳型から漏れ落ちていた過去をほどいて
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軸となる実景を得て迅速に慈愛をこめて自我をうずめる
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先生といわれるほどに生きてきた気がしないまま先生をする
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このきずのおかげで今日を詠んでいてときおりそっと撫でつけている
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二度目の死、未読ばかりが延びていく画面ももはや見えなくなって
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遠足で仔山羊を撫でる感覚で「法に触れてみよう」と誘う
2
想像を超えて巨きな泡沫うたかたの薄膜上で歴史をつづる
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端正な山のほとりで明日からの雨風のない道を祈って
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そうやってお前とおれの断絶は百年前から広がっている
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垂直に昴はのぼり筋雲は水平線を過ぎ越してゆく
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きみはたぶん序盤のつよい中ボスで我が人生の裏ボスじゃない
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寓居にて宮司はつまむ群生す茱萸ぐみの樹に生る紅蓮のしずく
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平和にもチャンスをくれと言い続け四半世紀を生き延びている
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のこりものばかり部屋には増えていき選んだのも選ばないのもおれ
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新月の晴れた丘にて今日からはメシエをひとつひとつ見つめる
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