Utakata
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感覚・空想・生活
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遠足で仔山羊を撫でる感覚で「法に触れてみよう」と誘う
2
想像を超えて巨きな
泡沫
(
うたかた
)
の薄膜上で歴史をつづる
4
端正な山のほとりで明日からの雨風のない道を祈って
2
そうやってお前とおれの断絶は百年前から広がっている
3
垂直に昴はのぼり筋雲は水平線を過ぎ越してゆく
2
きみはたぶん序盤のつよい中ボスで我が人生の裏ボスじゃない
3
寓居にて宮司はつまむ群生す
茱萸
(
ぐみ
)
の樹に生る紅蓮のしずく
5
平和にもチャンスをくれと言い続け四半世紀を生き延びている
3
のこりものばかり部屋には増えていき選んだのも選ばないのもおれ
4
新月の晴れた丘にて今日からはメシエをひとつひとつ見つめる
3
失くなった優勝可能性だけど白球を追うまなざしは濃い
3
暮れがたの
樟
(
くす
)
の陰よりくちなわは
縊
(
くび
)
るえものを企てている
4
荷解き終えつとめを終えた部屋中のカードボードを平面に帰す
3
浮き世へとうまれるまえの薄明かり憂いを帯びた海がはじまる
2
うたよみの潜る廃坑つるはしとジーンズなどを売りさばきたい
3
六秒を過ぎて居座る静謐で比喩の皆無な殺意とともに
3
元来の祇園精舎になき鐘は片手で鳴らす柏手のごと
2
おまつりはまだ終わらない様々の世界が並ぶ片隅に立つ
4
何人も未踏の峰のいただきに
姉羽鶴
(
アネハヅル
)
のみ知る空の蒼
7
君だって指差すために幾千も積み上げてきた状況証拠
4
乳頭に毛糸を垂らし一糸ほど纏っていると主張するきみ
1
ゆびさきを針刺すたびに握りしめ赤いビーズを生やしてしまう
6
肺胞に幽かな針と分け入ってきみのことばを分かってみたい
3
秒針を追い越せぬまま凡百の選手の夏がさきほど終わる
4
朝涼を裂いて同志はテラスへと
Ω
カーブを駆け抜けてゆく
2
針ひとつボーダー柄のゆかに落ちその値へと近付いていく
2
金剛の針を落として眼をつむり円かな声を聴く皐月闇
2
ざわめきが訪れてなお楽章にひびきつづける通奏低音
5
人知れず大気はうごき閉ざされた原野のかたち確かめてゆく
6
密やかに結晶はのび不可算のきらめく針をはらむ晶洞
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