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感覚・空想・生活

去年から無人のホームこの場所を出るためにあと二年は通う
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ため息の数だけ逃げた倖せもどこかに吹き溜まっていてくれ
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いろいろと思い描いていた中でいちばんすごい世界の終わり
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自己愛を育んできたどうせモノ、モノだって眼に見守られつつ
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何人にも求めはしない充分にわたし自身をねぎらえている
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4卓に呼ばれるたびにお寺からもらった水を空席に置く
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手元にはいつも合わない鍵ばかりきみのこころを開けずにいる
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完成にかけた時間の大半は消えたピースの捜索の日々
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目的の違うハサミをおとうとは同じかみなんだからとかざす
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ことさらに矯正された記憶もなく持ち手を向けて手渡していた
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同列にされてばかりで天才のように研ぎあげられた鋏も
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うたごえを幾つも投げて蝙蝠のように詩性を定位している
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唯一のご主人様を持たぬまま仕えることに仕えるわたし
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泣きながら聞いた浜辺の波音に楽器のような螺旋をこぼす
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ほんとうにドアがつめたい昨日から誰もここには帰らないので
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あのガムの絵柄を馘になってから雪原よりも白い経歴
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教室のパースはいつも静謐にジュブナイルを舞台装置に
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火花もなく滴り落ちることもなくいま燃えつきたきみを忘れじ
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唇の産まれる前に蛭は居て斯様に肌を吸っただろうか
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斐伊川は鉄穴かんなを洗いくろぐろと木次きすきの里の雪にあらがう
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北方の荒野に鋤を差し込んだつわものたちのほそい踏み跡
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お前というしもべのことをついさっき「人間」ということを知ったが
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胎内に動力を得た白鳥もその湖面には縛られたまま
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天辺で燃ゆるカペラに豊穣を託して葡萄園は密やか
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取られるとわかっていても家からの駒でやりたかった初手王手
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野ざらしに斃れてもまだその腕とまなこは空に挑みつづける
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北からの目線をよそに足早に都は白のかんぬきをする
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おまえほどおれは忠実には待てずこうしてひとり雑踏をゆく
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百円を入れてしまって最後まで話しきろうと話題をつなぐ
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ほんとうにひとが出るので履歴書は手書きでいちまいだけを書きたい
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