まるや
0
22
投稿数
542

日常短歌と創作三国志短歌

おはよう 血まみれになったぼくの手が事後承諾の申請を寄越す
4
花の名を知らぬわたしの手を引いておさない姪が庭園をゆく
7
あの頃のきみが抱いた夢たちは押入のくまが預かっている
8
交歓の悦びに染まりゆく頬を覆う鱗はさざ波の味
7
小銭と鍵、脱いだ靴下、爪楊枝 床に散らばるわたしの皮肉
7
ずっと親友だよね いま古紙として置き去りにする交換日記
9
姉が飲むオレンジ色の水薬がほしくて擦った体温計
7
もう鍵を外したふたりが向き合って夕日を浴びる自転車置き場
9
満ち潮のひとみに浮かぶ月たちをあつめて照らすパウダールーム
5
庭園は湧き出す蝶の洪水で月のひかりがほの暗く揺る
6
アクリルの青で汚した袖口に見え隠れするありもしない傷
4
嘘をつくたびに欠けてく三日月の刃先に沈むきみのつま先
6
まだ落ちてゆけるわあなたの眼のなかのうさぎの穴より深いところへ
6
二歳半 妹とねむる母を恋い毎夜吸う薄い黄色のタオル
9
きみからの日課の「死にたい」報告に指先が担う脊髄反射
6
考えるな命短しただ進めたとえば分数同士の割り算
7
あのひとの痕跡だらけのEXCELでIF関数の書き方を知る
7
人間を遮断したくて人間の声を聴いてる鼓膜のそばの
6
透明感のある声ですねええわりと鳥とか虫とかぶつかってきます
8
悪役の非情な台詞に酔いしれる赤いマントを膝掛けにして
5
高らかに謳われるきみの人生の最終章はぼくだけのもの
4
半年間音沙汰なかったきみをいま惰性スワイプで流した気がする
4
それぞれの真実を抱え生きていく 誰も彼女を殺していない
4
Love is all 緊張高まる各国が抑止力として保有する愛
6
ひとりきりの嵐のよるが明けてゆき窓に無数の手のひらの跡
7
立ち入りが禁じられていた父の部屋 きょうの壁に咲く孫の折り紙
11
きみどりの絵の具を溶かした水がすき 乗換駅の噴水の沈黙
7
ねむれよいこよ野ばらの蔓に守られたきみの夢こそが真実の世界
6
ぼく越しに流星群を見上げてるきみの瞳に反射するひかり
6
桟橋のスワンボートの隙間から破れたシューズの爪先を浸す
4