まるや
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日常短歌と創作三国志短歌

晴れの日も嵐の夜も地獄でもきみに寄り添う係数として
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泣かないできっとだよって声がして点滅はじめる夜中の信号
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嘘つき なじる言葉も取り込んで知識の海はまた嘘を生む
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バイパスの潰れた軍手たちが見るROUND1での決闘の夢
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友人の墓地を荒らしたMichelleから犯行声明 エッチなDM
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あの夜にきみが指してた方角を知らない 右耳に揺れる巻貝
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レジェロ きみの楽譜に残されたさいごの願いまで軽やかで
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おはよう 血まみれになったぼくの手が事後承諾の申請を寄越す
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花の名を知らぬわたしの手を引いておさない姪が庭園をゆく
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あの頃のきみが抱いた夢たちは押入のくまが預かっている
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交歓の悦びに染まりゆく頬を覆う鱗はさざ波の味
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小銭と鍵、脱いだ靴下、爪楊枝 床に散らばるわたしの皮肉
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ずっと親友だよね いま古紙として置き去りにする交換日記
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姉が飲むオレンジ色の水薬がほしくて擦った体温計
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もう鍵を外したふたりが向き合って夕日を浴びる自転車置き場
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満ち潮のひとみに浮かぶ月たちをあつめて照らすパウダールーム
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庭園は湧き出す蝶の洪水で月のひかりがほの暗く揺る
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アクリルの青で汚した袖口に見え隠れするありもしない傷
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嘘をつくたびに欠けてく三日月の刃先に沈むきみのつま先
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まだ落ちてゆけるわあなたの眼のなかのうさぎの穴より深いところへ
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二歳半 妹とねむる母を恋い毎夜吸う薄い黄色のタオル
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きみからの日課の「死にたい」報告に指先が担う脊髄反射
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考えるな命短しただ進めたとえば分数同士の割り算
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あのひとの痕跡だらけのEXCELでIF関数の書き方を知る
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人間を遮断したくて人間の声を聴いてる鼓膜のそばの
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透明感のある声ですねええわりと鳥とか虫とかぶつかってきます
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悪役の非情な台詞に酔いしれる赤いマントを膝掛けにして
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高らかに謳われるきみの人生の最終章はぼくだけのもの
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半年間音沙汰なかったきみをいま惰性スワイプで流した気がする
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それぞれの真実を抱え生きていく 誰も彼女を殺していない
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