まるや
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日常短歌と創作三国志短歌

天国の門は見えない加速する呼吸にどれだけ急かされようと
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雨の日も花柄のワンピ纏うひとなまえは春子アタシの親友
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届かない高さにあったトースター母の想いとつめたい食パン
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前の車を追ってくださいどこか遠くへ導け県外ナンバー
4
昨晩の名残を拭う春の風ざらつくシーツが終わりを告げる
4
勤務医の胸ポケットからはみ出した三色ペンの折れたクリップ
4
ごろ寝する大きな背中が呼び覚ます三歩後ろを追いかけた日々
9
すずめの声 夜明けとともに夏は往く答え合わせが終わってないのに
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ずれていく公転軌道に気付けずにぬるくなってたぼくを焼く熱
7
あの頃のきみの笑顔と重なってエイの展示に集中できない
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休暇明け無人となった病室はきみの名残も漂白されて
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凪いでゆく波間に石を投げるようにきみの名を呼ぶ まだ生きている
10
先週とおなじ下着のきみが棲むWi-Fi不通のぼくの1K
5
吸って吐くぼくらが生きる過程ごと調和していくアンサンブル
5
届かない祈り それでも縋るように毎朝響く社訓の唱和
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もうすこし一緒にいさせて太陽よまだ行かないでぼくらを見てて
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窓越しにいぬのふたつの耳が揺れ北風のつよさ知らせてくれる
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ひとびとが呼吸を思い出すまでの終演直後の一瞬の闇
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日陰から伸ばしたきみのてのひらが焼けた歩道に花を咲かせる
7
あふれだす甘いかおりのしあわせに汚されていく頬や指や肘
9
人が逝き星になるなら流星のかけらが花になりまた廻る
9
やむを得ずヤカンに活けたひまわりが首を傾げて遺憾を示す
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雨と雪、やさしい日差し、第六感 空から降るのはそれだけでいい
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燃え落ちた昼の残骸を貪って夜空はかがやく月を孕んだ
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さみしさをアクアマリンの水槽に放てば揺れる鈍色の背びれ
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これまでのすべてがぼくを作り上げぼくも誰かの一部になってく
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折り紙のチューリップが咲く病室におさない孫のてのひらの蝶
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ベランダに鳩がたまごを産んじゃってクラッシックをかけてみたりする
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泣き虫なわたしが濡らすいぬの背もぬくめてつつむひだまりの庭
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病床を抜け出した祖父が見た海にあの日と同じ夕陽が沈む
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