月夜ぼたん
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ただ歌を詠むことが好きなおばあちゃんです。よろしくお願いします。

ストーブの前に座って一秒を 数えるようにミルクティ飲む
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冬の日が残りし二月の夕食に 思いを込めたクリームシチュー
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千円の制約作った買い物の 1/3のブロッコリーかな
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コロナ後の料理の味は曖昧で 何度も重ねる味見の小皿
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イタリアのお土産一つ口に入れ 飲み込むまでは日本茶の仕事
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特急の残した音は広がりて  蕾の固い桜の下に
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引き出しの奥から出てきた手紙には夕焼けの染みくっきりとあり
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いつの日も共にいる人いることは 二月の午後の静かな春風
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「あと二日 私が五歳になるまでに」輝く光誕生日来る
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人形の静かな笑顔に見守られ 雛の季節の桃のごと孫
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写経する右手の筆ペン少し揺れ 深く息吸い背筋を伸ばして
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炊き立てのキノコごはんの香ばしさ 大根おろしにじゃこ添えて
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七日ぶり珈琲の薫り立ち上り 苦味身体の隅々へ流る
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寂しさが懐かしくもあり 横になり苦しみ病んだベッドに座る
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歌を詠む気にもなれずにいた日々よ 何か奪わる私の異常
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いつの間に春は来たのと問いかける 地中の土筆の声を探して (コロナ七日目)
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自宅にて病んだ日々にはお共あり スマホとポカリと遠い思い出
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ごちそうは主役が決める誕生の 肉食女子は五歳になりぬ
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伏す我に友はメールで知らせたり 水墨画に似て今宵の月は
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大好きな柑橘類は「はるか」といふ 飾らぬ顔の香の奥深し
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わがコロナ母のところへお引っ越し 抗体もって看病開始
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あなたから教えられしこと余多あり 細胞レベルの記憶だけれど
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病んだため最後のお別れできもせず 弔電打ってるベッドの上で
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こんなにも苦しいなんて知らずいて 命さえ連れ行くコロナかな
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手渡した春ボタンの木植えた庭 叔母にもらった最後の手土産
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八朔の瑞々しさに手を触れる コロナは少し離れていった
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花好きな叔母のお通夜に雨が降り 水にとけだす白梅の香は
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自分へのお見舞い一つ「はるみ」なり 枕元置き見つめあってる
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差し入れの友が野菜を玄関に 「お大事に」の声共に置きおり
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危篤にて駆けつけ出会う叔母ならば 花好きゆえに梅の話を
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