月夜ぼたん
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ただ歌を詠むことが好きなおばあちゃんです。よろしくお願いします。

水やりを忘れてビオラ倒れおり   じょうろ片手に呟く「ごめん」
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紫陽花の固き緑の蕾には 一つ一つに覚悟のありて
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忘れ得ぬ名前をそっと呼んでみる 返事の聞こゆ風の中にぞ
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朴の葉で鱒と生姜のすし飯を 包んだ初夏の我が家のご馳走
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能登の方手合わせ祈る 朝風よ 気持ち運んで静かに吹けと
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災害の予告は空にあるかもと 見上げる癖はホントは嫌い
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さくらんぼ今年も可憐な実のつけて カラスも狙う戦場と化す
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話しさえ急に聞こえぬ母なれば 耳の近くの大声悲し
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数センチ風呂の窓開け夜を呼ぶ 涼風顔に受ける幸せ
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地獄耳自慢していた母なれど 聞こえぬことも良いことありと
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母ついに九十六になった日は 風はいつもと変わらず吹いた
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ハンドルを握りどんどん離れてく 遠のく家は私縛れぬ
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一曲の名前も知らぬボーカルの 声に恋した五月のドライブ
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手を掛けぬ庭に今年も咲いており 鮮やかな白二輪草たち
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百七の誕生祝いろうそくを 吹き消す伯母の真面目な横顔
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原因と結果はいつも決まってる わかっちゃいると蟻に呟く
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ラベンダー 直線の茎 跳ねるよに 背伸び始める 空に向かいて
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いいことも良くないことも同じ数 毎日起きて私の一日
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カーテンを通して朝の気配あり 地球の自転今日も止まらず
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補聴器を片耳つけた母といて  聞こえぬ辛さを聞いてる辛さ
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胆嚢のダイヤの原石動きだし カタリコトリと痛み始むる
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丁寧に生きたい我の目標は 一日五本草を抜くこと
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責めないで思い出さずに捨てちまえ 変わらぬ過去にシニアの極意
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全員の頭文字NゆえにNの会 近い過去しか持たぬ関係
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うつむいたまつ毛の影の灰色は 子ネズミ色の五歳の少女
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五線譜の音符のように流しつつ 少女の髪は黒く輝く
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空と陽と 相談しつつ 洗濯を 出し入れしてる小さなさち
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後遺症 味覚障害 難聴と 我が家 病の 百貨店かな
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やめなさい ファッションチェックする癖が 目付きの悪さ連れてきている
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野の花の 小さき色の優しさに 甘えたくなりしゃがみこむ午後
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