月夜ぼたん
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ただ歌を詠むことが好きなおばあちゃんです。よろしくお願いします。

何よりも「意欲」を削がれ寝る日々よ 我苦しめる病の力
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隣から聞こゆる軽き母の咳 白き庭先から来る冷気
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あと少しで百歳なれば痛みとか寂しさ抱え一日生きる
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土曜日の朝はゆっくりやってくる 焦げ目の付いたフレンチトースト
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今朝もまた雪は枯野に舞い降りぬ 春の息吹も覆い隠して
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知り合いの初出産の予定日は もう三日過ぎ雛の祭り日
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次々と初ウイルスの現れて 我が家の予定ぐちゃぐちゃになる
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家々を子らが回りて菓子もらう 「雛様見して」夢ある伝統
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味覚ない世界はこんなに色褪せて 白黒だけの場面を生きる
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妹のくれた苺の大福の  春の柔肌セロファン越しの
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バースデーにメールをくれたあの人の 特別な日をわたしは知らぬ
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ユーミンの色遣いとは違うけど 自分は自分の色に染めてた
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三日目の鍋のおでんの大根に 甘えてしまう微熱のわたし
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特急の車窓に流る風景に 思い巡らすこたつの中で
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美しき心でありたい明日までは 自分以外の人を祈る日
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京都には背筋を伸ばす思い出と 受け入れられない温情がある
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風花は冬の名残の置き手紙 二月のつもりで三月に読む
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メイちゃんとさつきが両方いるような 孫の言葉の面白味かな
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明日五歳 孫はどれほど幸福を  我に与えて生かしてきたか
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行き先を決めず旅路の人となり 漂う時間に委ねてみたし
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病にて奪われしもの意欲なり 吾の魂よ割れてくれるな
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炊き立てのご飯にゆかりの朝ごはん 1日分の幸せを食む
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ストーブの前に座って一秒を 数えるようにミルクティ飲む
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冬の日が残りし二月の夕食に 思いを込めたクリームシチュー
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千円の制約作った買い物の 1/3のブロッコリーかな
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コロナ後の料理の味は曖昧で 何度も重ねる味見の小皿
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イタリアのお土産一つ口に入れ 飲み込むまでは日本茶の仕事
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特急の残した音は広がりて  蕾の固い桜の下に
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引き出しの奥から出てきた手紙には夕焼けの染みくっきりとあり
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いつの日も共にいる人いることは 二月の午後の静かな春風
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