プー子
105
109
投稿数
745
新雪はナナカマドにはよく似合う赤き実たわわ綿帽子ふわり
23
茶碗蒸し出来上がっても雪止まず師走尽日どこまで積もる
28
喪の姉を思い飾らぬ縁起もの 小さき手縫いの鏡もちのみ
27
年末にキツネの見廻り途絶えたか夫の杞憂に「実家帰省よ」と吾
22
年の瀬の圧力鍋はフル回転きのう黒豆今日はきんとん
26
静々と暮れ行く冬の茜雲きみへのラインへ既読は付かず
24
クリスマス少し遅れの屋根カラスしっかとチキンの骨を咥えて
24
家事のこと口は出ださぬが手も出さぬ半世紀過ぐ夫との暮らし
32
朝なさなキツネの見廻り続くらし雪 に幾筋足あと残し
26
習わしは習わしだとて仏教徒ケーキとチキン疑いもせず
23
祝詞受くふたつの餅を雑煮にし一年祭の翌朝の膳
22
幽世かくりよの義兄の一年如何なりや長き祝詞をを下げて受く
21
ひとつ鍋つついて楽しい短歌うた仲間 会の楽しさ確かめあって
26
冷えしるき夕べまたたく星々の父母兄姉は並びて見ゆる
19
締め切りを四件こなしゆるゆると寒夜の星を見るでもなしに
31
提出の自信作なる手習いは講師の チェックを次々と受け
21
真冬日の続くさ中の紙面にはこともなさげに灯油値上げと
25
雪積むもキツネの見廻り抜かりなくわが家の花壇を斜め横断
27
真冬日の続く夕餉はあつあつのポトフがいいね 夫の好みの
26
低温は少しの雪も解かさずに嵩は増し来るすべてを覆い
19
丁寧な除雪を終えて戻りくる夫は手指のみ冷えるといつも
26
「会いたい」と病を告げる君の声 耳朶に残して季ふたつ過ぐ
24
見定めぬ夫のこころのそのかたちすでに後期高齢なるも
21
俯瞰する毛氈苔モウセンゴケは食事中小さき虫の動きは止まず
22
木道に這いつくばって目を凝らし毛氈苔モウセンゴケを見しはいつの日
25
山の端の夕陽を追うかみんなみに三ケ月浮きて真冬日初日
26
図書館の過ぎる静けさ予約せし新刊借りる手袋のまま
26
読み終えぬ図書をポストに返すとき真冬の空へため息ひとつ
29
条幅へ初のチャレンジ手本とは似ても似つかぬ十四の文字
17
持て余す理解のできぬ小説に夜ごと寝落ちのその一ページ
34