プー子
106
110
投稿数
795
ふいに来る稚内から雪だより律儀に北の果てからの冬
22
ハンドルを握る私に「見よ」といい苅田の白鳥姉は指差す
23
ひとときを空を眺めて静かなり媼三人みたりの富良野の満月
21
紅葉の峠をいくつ越えていく姉の住む街一年がぶり
18
赤々と花の残れるダリア掘る明日の気温は0度の予報
23
軽快にミシンはかどる秋の午後次のランチに間に合うように
29
手のひらに触れる僅かな凹凸を命と認め取り出す筋子はららご
27
療養の兄のなづきに住むはだれ末妹の吾の名は呼ばず
28
咲き残るサルビアに舞う白蝶に恋の相手はもう顕れぬ
26
掘り起こすグラジオラスの大き根 を「来年会おう」とそおっとしまう
29
収穫の最後と届くピーマンの不揃いながら蒼き香のたつ
35
ナナカマド枝もたわわの実をつけて日毎色づきふと足を止め
18
新聞を取ることもせぬ夫なれどこの秋最初のストーブ付ける
24
秋晴れの庭に飛び交う雪虫のDNAの狂うことなく
16
オーロラをも一度見たいと目指す北 あれはいくつの夜だったのか
18
根詰めて挑む「滲み画」なかなかに思いに任せぬ難題なりて
17
友からの愚痴の電話を終えた後夜長の秋にトマトジャム煮る
23
正確な目覚ましに起きスイッチオンこの秋初の新米を炊く
23
待ちかねた友とのランチ笑い声時折あがり話題は尽きず
19
雑草の中から次々立ち上がりコルチカム咲く廃屋の庭
21
炎天に戸惑いみせる雪虫はほんの数匹 九月尽日
18
湖のほとりの畑らい年の豊穣を乞いキカラシ咲かす
16
赤々と湖の端染まるなか鷺の群れ立ち「見よ」とばかりに
20
湖の浅瀬を赤く染め尽くすサンゴ草群野鳥の集う
17
寝られぬ真夜のラジオの二胡の音にどこかで秋の深まる気配
19
秋に吹く淋しい風によく映える吾亦紅には亡姉の面影
20
身震いのひとつおきそな今朝の冷え「彼岸明け」かと庭に下り立つ
16
秋の陽を浴びる鞦韆トンボ乗せわずか揺るるや意思もつように
22
デントコーンの穫り入れ急ぐ畑には大型機械がダンプ従え
16
コルチカムポツポツ頭を出してきてあゝ本当に秋を迎えた
17